香川真司「チームワークだけじゃ、世界では勝てない」 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

 香川の口から「個の成長」という言葉が出るのは、不思議な感じがした。ドルトムントで実績を残して、さらにマンチェスター・ユナイテッドでも活躍するなど、彼はここ数年で、他のどの選手よりも個の質を上げてきたからだ。

「確かに、ドルトムントからユナイテッドに移籍し、(自身の)成長曲線はすごいかもしれないけど、個人的にはまだまだ課題が多い。ユナイテッドで『少しやれた』と思ったのも、シーズン後半だけですから。

 僕のポジションで言う"個の力"というのは、ゴールを自分ひとりでも、(周囲との)コンビネーションでも決められる力。ブルガリア戦、オーストラリア戦と、何度かチャンスがあった中で、(自分は)1点も取れなかった。そこの精度や強さを上げて、決められる選手にならないと世界では活躍できない。

 もちろん自分だけじゃなく、みんなも個を磨く必要がある。最近は、選手個人だけを見たら、多くの選手が海外に出て、ひとりひとり成長した部分はあるけど、代表として集まったときに、まだまだ個の力が足りない。攻撃で言えば、FWと2列目の選手全員が高い個の力を持っていなければいけない。ひとり、ふたりだけでは(相手に)研究されて、苦しい展開になる。少なくとも3、4人は個の力を持った選手が出てこないと、世界で戦うのは厳しい。とにかく、全体的に個の質を上げて、その部分がもっともっとチームの力として反映されてこないと、(W杯では)話にならないと思います」

 翻(ひるがえ)って、これまでのチームとしての成長について、香川はどう捉えているのだろうか。ちょうど1年前、W杯最終予選がスタートして、ホームで2連勝を飾った際には、選手の誰もが日本の強さ、成長を実感していた。だがその後は、飛躍的な進化を感じる機会が少なくなっている。特に今年に入ってからは、停滞感さえ漂っている。

「う~ん......、今のチーム状態は良くないですから。どのくらい自分のイメージするチームに近づけたのか、正直、ちょっとわからない。(成長の度合いを)アジアではかるのと、世界ではかるのとでも、まったく違うと思いますし。そういう意味では、今度のコンフェデレーションズカップが、(チームの)成長を見極められる、ひとつの目安になると思います。

 ブルガリア戦、オーストラリア戦と勝てない試合が続いて、コンフェデレーションズカップの前にどうチームを修正していくか。そこからチームの状態が変わって、昨年(10月)の欧州遠征では0-4で負けたブラジル相手に、彼らのホームで自分たちの戦いがどれだけできるか。そこで、初めてチームの成長を見ることができると思う。そういう意味では、チームとしての本当の力が試される大会になると思います」

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