名波浩が斬る「今の日本代表に『W杯優勝』なんてできない」 (2ページ目)

  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 本来、こういう状況になったら、ゆっくりとボールを展開して、相手をいなしながら攻めればいいのだが、日本はちょっと仕掛けを急ぎ過ぎてしまった。特に問題だったのは、味方同士の距離を近づけるのが早過ぎたことだ。オーストラリアがペナルティーボックスの周りで人数をかけて守ろうとしているのに、日本もそれに合わせて味方に慌てて近づいていって、わざわざ人数をかけて狭いところを突破しようとしていた。

 もちろん、香川と本田がワンツーで決定機を生み出したような形が常にできればいい。あれは、世界中のどの国も脅威に感じるだろう。しかし、敵の選手が密集しているところに突っ込んでいっても、そうそう崩し切れるものではない。それも、味方選手同士の距離が近過ぎれば、スペースが余計になくなり、窮屈なパス交換を強いられるため、なおさら突破を図るのは難しくなる。

 それに、うまく抜け出すことができなければ、前線に何人かの選手が取り残されて、カウンターを食らってしまう。事実、長友佑都の裏をつかれて、ピンチになりそうなシーンが何度か見られた。この日は、オーストラリアの攻撃が単調だったし、今野泰幸や吉田麻也がよく対応していたからいいものの、もっと上のレベルのチームとやっていたら、かなり危険なシーンが増えていたかもしれない。

 また、味方との距離が近過ぎると、居場所をなくしてしまう選手がひとりかふたり、必ず出てくる。とりわけ後半は、中央から左サイドに人が偏り過ぎて、岡崎の存在が完全に消えていた。それは、とてももったいないことで、全体的には非常に効率の悪い攻撃をしていたように見えた。

 最終的に1-1という結果を残したのは評価できるが、こういうサッカーをしていては、さすがに世界では通用しない。選手たちは「W杯で優勝する」と言っているが、現状のままではとても実現できないだろう。

 攻撃に関しては、もっとボールを動かして、いろいろなバリエーションを作っていかなければいけない。例えば、サイドチェンジやロングボールを使った展開がもっとあってもいい。サイドチャンジが1本あれば、その分、人が動くし、スペースもできるから、違った形が生まれるだろうし、人数をかけた中央突破もより生きたはずだ。にもかかわらず、この試合では効果的なサイドチェンジがまったく見られなかった。長谷部誠から長友へ、遠藤から内田篤人へ、というサイドチャンジをするにはいいタイミングが何度もあったが、同サイドの狭いところにボールを運ぶシーンが目立った。

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