田中陽子ら「ヤングなでしこ世代」は成長しているのか? (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko photo by Hayakusa Noriko

 その逆に、若い世代がスタメンとして自分たちでチームをつくっていかなくてはいけない状況にあるのが浦和だ。今やチームにとって欠かせない存在となっている柴田華絵は、2月のなでしこジャパンの合宿にも招集された期待のアタッカー。153㎝と小柄だが、豊富な運動量と切れ味抜群のドリブル突破で得点にからむ。昨季は、矢野や柳田ら、周囲のベテランに活かされてその能力を発揮していたものの、今季は自分たち若い世代だけで試合をコントロールしなくてはいけない。現在まで1勝6敗と、苦しいシーズンとなっている。

「流れが悪いとき、自分たちの力で流れをとり戻せない脆さがある。誰かに頼るんじゃなくて、ひとりひとりが責任を持ってやれているときは結果につながる。難しいけど、ここを越えられたら本当に強いチームになれると思います」(柴田)

 浦和の選手は、まだまだ戦術理解や個の力のレベルアップをしなければならない。その成長スピードはまだ緩やかかもしれないが、実戦を重ね、ゲームの流れを見極める力が身に着いていけば結果もついてくるようになり、チームが大きく揺らぐことはなくなるはずだ。

 田中陽子のように、お手本となる先輩とともにプレイしながら自らを高めてチームに貢献するか。柴田や猶本たちのように自分たちの手でゼロからチームをつくり上げるか――。それぞれの道を選んだヤングなでしこ世代の選手たち。問題はそこから何を得るかだ。

 彼女たちがそれぞれの成長を確認できる場が、なでしこジャパンや、U-19代表の舞台だ。特になでしこチャレンジを含めて、“なでしこジャパン”を目指す選手は、リーグで活躍できても、なでしこジャパンではほとんど通用しないことを2月の合宿で痛感したはず。

 現段階でヤングなでしこ世代が順調に成長していると断言はできないが、少なくとも、今シーズンの経験は、彼女たちの今後のサッカー人生に大きな影響を及ぼすだろう。

 次に両チームが対戦するのは約5カ月後。リーグ戦や、代表合宿などでの試行錯誤を経て再び相対するとき、彼女たちはどんな成長を見せてくれるだろう。

 なでしこジャパンのロンドン五輪での激闘を収録!
『がけっぷち上等!なでしこは泣いて笑って強くなる』好評発売中

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る