【日本代表】名波浩の視点/「トップ下・香川」で結果が出ないワケ

  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

日本唯一のゴールを決めて存在感を示した香川真司だったが......。日本唯一のゴールを決めて存在感を示した香川真司だったが......。 アウェーで行なわれたW杯アジア最終予選のヨルダン戦。日本は1-2で敗れて、5大会連続のW杯出場権獲得は6月へと持ち越された。

 日本の試合への入り方は悪くなかった。ヨルダンの勝ちたいという思いや、戦う気持ちの強さにやや押されていた感はあったものの、高い位置から素早いアプローチを見せて、テンポのいいボール回しから何度か決定機を演出していた。

 ただ、絶対に与えてはいけない先制点を、前半の終了間際という、最悪の時間帯に奪われてしまった。それが、チームに与えた影響は少なくなかった。選手たちには焦りの気持ちが多少なりとも芽生えただろうし、リスクを冒したプレイをしなければいけないだろうな、という考えも浮かび上がったと思う。結果、後半15分に前がかりになったところで、カウンターから追加点を奪われた。その後、反撃するも1点にとどまり、苦杯を舐めた。

 守備では、味方のカバーリングに入らなければいけないときに、自分がマークする目の前の敵のケアに精一杯で、持ち場を捨て切れずにピンチを招くことが多かった。そこは、選手個々が広い視野で相手の位置をとらえ、状況によっては自分のマーカーを捨てて、できるだけ前の段階で敵の突破を防ぐような守りを見せてほしかった。

 アジアのチャンピオンとはいえ、1対1の勝負で振り切られたり、ドリブルで持ち込まれたりした回数がどれほどあったことか。結局、日本の力がアジアでもダントツではないことは明らかなわけで、どんな局面においても、常に数的優位で対処するイメージを持って守らなければいけない。そのためにも、同サイドの選手同士はきちんとコミュニケーションを図って、それぞれの役割をはっきりとさせなければいけなかった。

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る