【なでしこ】2013年初勝利。デンマーク戦で発揮された「日本らしさ」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko photo by Hayakusa Noriko

 また左サイドバックの鮫島彩、左MF川澄奈穂美のコンビが生み出すスピード感ある攻撃は、ロンドン五輪の時以上にインパクトがある。川澄の中央に切り込むドリブルや、的確なポジショニングからスペースを確保する動きに鮫島のオーバーラップがからむ。さらに鮫島から相手DFラインの裏を狙うロングボールも繰り出されるようになった。右サイドバックに抜擢された加戸由佳と、右MFの中島にとっては、最良のお手本となったはずだ。

 このデンマーク戦で、なでしこらしいサッカーの引き金になったのは、やはりプレスだろう。高い位置から連動しながらボールを奪う日本のプレスは職人技。現在の女子サッカー界で、ここまで計算されたプレスをかけられるのは、日本以外にないのではないか。

 デンマーク戦では開始直後から、プレスが効果的にかかり、攻守がかみ合った。プレスの出来不出来は、なでしこジャパンのバロメーターなのである。このプレスなくして、守備網を築くことも、ゴールを奪うこともできない。そして、その習得が新たにチームに加わった選手たちがぶつかる最初の、そしてなかなか越えられない壁なのである。

「ボールの奪い方というのは本当に大事。それこそ、経験していかないと身につかない。オリンピックやワールドカップでサブに入っていた選手がいても、そこに新戦力が加わるとまったく違うサッカーになってしまう。練習が足りていないと痛感したのがノルウェー戦。(敗戦は)高い授業料だったのかもしれないです」と川澄は振り返る。

 初戦の敗戦以降、トレーニングでは選手同士で話し合う場面が多々見られるようになった。それでも、若い選手たちにとっては、プレスの連動のイメージをつかみかけているところ。まだまだ戦術面の理解が深まっていないのが現状だ。

「気になる選手にもう一度出場機会を与える」という佐々木監督。アルガルベカップ最後の試合である5位決定戦、13日の中国戦での個々のチャレンジに注目したい。
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