【日本代表】豊田陽平「自分が代表に選ばれたら......」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

「来季は研究されるし、マークもきつくなるけど、20得点はいきたい。ただ、数字を目標にはしたくないです。“あと何点ですね?”と記者に聞かれ、余計な重圧になるから。自分は力が入りすぎると思うように体が動かなくことがある。いいイメージを忘れず、日々成長していくだけですよ」

猛獣の牙のようにも見えるマウスガードは、彼のトレードマークだ。鳥栖の歯科医院で特別に作ってもらったというその戦闘用具は、覇気を前面に放出して戦う彼らしい。サイドからのボールを体ごと沈めるようなシーンには、ストライカーとしての執念と愉悦を感じさせる。

「自分は“逆境が好き”というわけではない。けど、例えばアウェーの環境は楽しめる方ですね。“見とけ、一発決めてやるから”と思うと気持ちが高まる。ぞくぞくとするんですよ」

 相撲の立ち合いにも似たゴール前での振る舞いは、代表にも大いに刺激をもたらすだろう。一歩を踏み込み、気を放出する。それだけで大抵のディフェンダーはたじろぐ。そして怯えた敵を、彼は一刀のもとに切り捨てる。

2013年2月6日のラトビア戦に向けた代表メンバーに、豊田は選出されなかった。JリーグのFWでは磐田の前田遼一が滑り込み、ロンドン五輪組の大津佑樹が初選出された。継続的な招集と若手抜擢の事情で、今回は選から漏れた形だろう。今は所属する鳥栖で結果を残すことが先決である。続けてゴールを決めていれば、必ず招集される機会はやって来るはずだ。

 北京五輪、豊田がメンバー入りしたのは本大会直前だった。

「(選ばれたら)自分は器用な選手ではないんで、前線からボールを奪い取る姿を見せたい」と、本人は語る。戦闘態勢はすでに整った。豪剣を振るう男の物語の続章はいかに。

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