【なでしこ】高校サッカーベスト4決定。優勝候補・常磐木学園の強さの秘密に迫る (2ページ目)

  • 松原渓●取材・文 text by Matsubara Kei 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 また、常盤木学園は他にもMF伊藤美紀、西川彩華、FW白木星(しらきあかり)がリトルなでしこ(U-17女子日本代表)に招集されており、9月のU-17女子W杯に出場した。白木は道上と同じ170センチの長身FWで、高さとパワーに優れる常盤木の"ツインタワー"は圧巻だ。

 その常盤木の強さの秘密を探ってみると、いくつかの興味深い特徴が見えてくる。

 まず、基本となるパス・トラップなどの技術がしっかりしている。パスの強弱や質など、状況に応じたボールの使い分けが徹底されている。日々のトレーニング前には、念入りなウォーミングアップで基本を徹底しているという。

「毎日、小さいボール(3号級)でパスをすることがウォーミングアップになっていて、技術がついたと思います」(MF佐々木美和/1年)

 道上のフィジカルの強さなど「個」を生かしているのがこの「基本技術の正確さ」だ。

 さらに、試合中の「声」の少なさも印象的である。

 常盤木学園に女子サッカー部が創部された1995年当時からチームを指導する阿部由晴監督はこう話す。

「TPOに応じて声を出さなければいけない時はあるけど、サッカーは声の大きさを競ったり、相手を威嚇する競技じゃない。試合中は大観衆の中で、たとえば南アフリカのブブゼラが鳴るなかでプレイする時は、声よりも判断の方がもっと大事だと考えています」(阿部監督)

 道上は「あえて声を出さないことを意識しているわけではない」というが、声をかけあわずとも、自然と阿吽(あうん)の呼吸ができている。それは「日頃から一緒に生活していて、チームメイトとのコンタクトやコミュニケーションが非常によくとれているので、そういうところは武器になっています」(道上)ということなのだろう。

 チームとしての特徴をさらに探ると、ユニークな「常盤木式」とでも言うべきメソッドが見えてきた。

 ピッチ内外で、いわゆる体育会系のしきたりでもある上下関係が一切ない。1年生は入部当初から3年生に対して一切敬語を使わず、ボール磨きもグラウンド整備も荷物持ちも、すべて3年生が進んでやるという。

「敬語は全然使わないですし、私生活でもみんな同じような(平等な)立場で生活しています。準備や片づけは3年生がやって、1、2年生のお手本になってくれます。1年生は基本何もしないで、3年生がやってくれます」(佐々木)

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