【なでしこ】岩清水梓が語るロンドン五輪の舞台裏。「あの悔しさは忘れられない」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko photo by Hayakusa Noriko

「自分たちDFがハーフウェイラインまで上げているんですよ。それで日本が攻撃してる。たとえチャンスで決められなくても、次のチャンスが必ず来るって確信できた。ほんの2年前まで、そんなこと考えられなかったじゃないですか。アメリカにはチンチンにやられてばかりで、何しても太刀打ちできない。DFラインだって上げさせてもらえない。ボールを回されて、クロスを上げられて、ズドンで終わり!みたいな(笑)。

 それなのに、今はアメリカがウチらのことをライバルだって言ってくれる。やっと認められたっていうか、本当に光栄なことだと思うし、そんなアメリカと初めて互角に戦えたあの決勝は本当に楽しかった」 

 それでも、岩清水には悔やんでも悔やみきれない決勝での1シーンがあった。最初の失点シーンである。

「(FWの)モーガンがトラップしたときに私が寄せていれば絶対に結果は変わってた......。絶対に。その後悔ばかり。日本に帰ってきてからも......今でも、ですけど。これはずっと思い続けることなのかもしれません。日本にもチャンスがあっただけに、悔しい。あの悔しさは当分忘れられないと思います」

 岩清水は2012年シーズンに入ってから、ケガに泣かされ続けてきた。復帰してはまたケガの繰り返し。なでしこジャパンとして、ロンドン五輪に向けて最後の追い込みをかける時期だっただけに、岩清水の焦りは募っていった。

「アルガルベカップ(2月)のすぐ後にあったキリンカップ(3月)も出場できなくて。あの時は自分の出ていないなでしこジャパンの試合を冷静に見られなかった。結局、最終メンバーを決めるスウェーデン遠征も行けなくて。みんなが猛烈にアピールしている時期に、自分は何をやってるんだろうって......。もし、スウェーデン遠征のメンバーでチームがフィットしちゃったら自分の居場所はないかもって思ったり、もう最悪でした」

■五輪直前。衝撃的だったフランス戦

 最終メンバーに名を連ねた岩清水だったが、五輪本番へ向けての国内直前合宿でも、ケガはまだ完治してはいなかった。ロンドンに入る前に合宿を張ったフランスで徐々に調子を取り戻すが、そこにはまた新たな衝撃が待っていた。

「ケガの後、初めて90分戦った相手がフランス! いや、あれはビックリしましたよ!(笑) 初めて戦ったフランスは本当に強かった。中盤のネシブなんか、なんでそんなうまいの!って思いました(笑)。アメリカほどダイナミックではないけど、中盤はしっかりつなぐし、テクニックもあるし、スピードもある。こんなに中盤でパスを回されるのは久しぶりだなって思った。怖い相手でした」

 そのフランスと五輪で対戦することになったのは準決勝。大会直前に0-2で完敗を喫してから、まだ1カ月も経っていなかった。そして、27本ものシュートを浴びながらもなんとか完封。2ゴールを奪っての勝利ではあったが、フランスに圧倒されたことは誰の目にも明らかだった。

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