ロンドン五輪決勝で、宮間あやの涙が止まらなかった理由 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko/JMPA

決勝後に涙したなでしこたちだったが、表彰式では全員が笑顔に決勝後に涙したなでしこたちだったが、表彰式では全員が笑顔に変化が起きた準々決勝
決意を固めた決勝戦

「何とかする。できると思う」

 固い決意――。だが、しっくりこない。そうしているうちに「2位狙い」問題が起きて、チームがガタつき始めた。今度はキャプテンとして、選手たちのケアに走り回らなければならなかった。バッシングの矢面にひとりで立つ佐々木監督の姿を見てすべてを受け入れようと心を決めた宮間は、チームの動揺を抑えようと動いた。だが、チームはワールドカップで感じた違和感以上にバラバラ。手の施しようがない。選手としての右サイド問題も、まだ解決していなかった。

「左サイドに戻してほしい。その方がチームのために働ける」

 宮間は、意を決して佐々木監督に直談判した。しかし叶わなかった。八方ふさがり。ブラジルとの準々決勝前日の宮間は、今大会一番のピリピリモードとなった。何をどうしてもうまくいかない。すべてを投げかけていた……。

 だが、どうしてもあきらめきれない。準々決勝のブラジル戦直前、選手ミーティングの機会をつくった宮間は、もう一度全員で戦うことの意味を説いた。思えば、今大会の宮間は、これまで以上に自分の感情を表に出していた。初戦のロッカールームでは、「こうしてみんなと戦えることが本当にうれしい」と話し出すと、思わず声が震えた。ブラジル戦前には「全員で戦おう」と誓い合った。そしてブラジル戦勝利の後は、喜びを隠さなかった。

「今日の試合は、こんな笑顔でもいいでしょ?(笑)」

 いたずらっぽく笑う。

「走れた~! もう本当に今日はみんなが誇らしかった! ここからが本当の勝負だよ」

 続く準決勝・フランス戦の前には、再びチームの士気を高めた。

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