【なでしこ】ベストでなくても勝つ。皇后杯でINAC神戸が示した「勝者のメンタリティ」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

 だが今シーズン、INACは勝ち数こそ増えたものの、簡単に勝利できない試合が増えた。スター軍団を倒すことができればこの上ない自信になると、他チームがこれまで以上にINAC攻略に磨きをかけてきたのである。INACとの対戦は全チームにとって、ひとつのバロメーターだ。INACをどれだけ苦しめられるか、それによって自分たちの実力の向上幅を把握することができる。

 その結果、INACは各チームの全力チャレンジを正面から受け続け、そのうえでねじ伏せていった――。簡単なことではない。「なんでINACとの試合の時だけ、こんなに必死になってくるの……?」わかっていても、シーズン中にはINACの選手たちから思わずこんな本音もこぼれた。

 それでも、積み上げてきたものには力がある。それこそが、今回の皇后杯優勝の一番の要因だ。「自分たちのサッカーができなくても勝てる。勝者のメンタリティのようなもので、昨年からしっかりと勝ってきたからこそ、(今日も)勝ちえたと思う」と、星川監督は愛弟子たちの奮闘を称えた。

 この皇后杯で2012シーズンは終了するが、年明けにはさらなる発展を目指して、INACの選手たちは来季のビジョンを描き始める時期に入る。選手の移籍の動きもあるかもしれない。若手中心にシフトしていくとしても、必ずリスクは生じる。それでも、INACが結果を求められる状況が変わることはないだろう。どんな顔ぶれで新シーズンをスタートするにせよ、INAC神戸にとって、来シーズン(3月23日開幕予定)はチャレンジの年になるはずだ。

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