【なでしこ】 「奇跡の16歳」土光真代。女子高生DFは名門でレギュラー定着を狙う (2ページ目)

  • 松原渓●取材・文 text by Matsubara Kei
  • photo by AFLO SPORT

 その岩清水は、土光を「1対1の対応がうまく、運動量がある」と評価しており、ベテランで元日本代表のMF小林弥生は、才能あふれるルーキーを「奇跡の16歳」と表現する。

 土光のストロングポイントは1対1の「読み」の鋭さ、大舞台でも動じない度胸、冷静かつ的確な判断。163㎝と高さはないが、持ち味のスピードとポジショニングセンスを生かした裏への対応に強さを発揮する。

 しかし、関係者やチームメイトからの高い評価について、本人は申し訳なさそうにはにかんで笑う。そんな周囲の評価とは裏腹に、トップレベルに行くために何が必要なのか、本人が一番よく分かっている。

「ベレーザで男子高校生と練習試合をすることもあるんですが、まともに当たったら勝てないのでタイミングをうまくズラすことは意識しています。ディフェンダーなので球際では負けたくないですし、簡単にシュートを打たせないことを心がけています」

 2011年に行なわれたAFC U‐16女子選手権(中国)では、不動のセンターバックとしてアジア制覇に貢献した土光。2012年はベレーザで最年少ながらレギュラーに定着し、リーグ戦11試合に出場した。

■U-20W杯でつかんだ手応えと課題

 そして、多くのサッカーファンや関係者を驚かせたのが、今年8月に日本で開催されたU-20女子W杯での活躍だろう。

 U-17W杯の出場資格もあったが、飛び級でU-20代表、ヤングなでしこ入りを果たし、全試合フル出場。ケガで大会欠場となった村松智子(ベレーザ)の穴をしっかりと埋め、ベレーザのチームメイトでもある木下栞と共に、守備の要として銅メダル獲得に貢献した。

 U-20代表入りのきっかけとなったのは、大会1カ月前に岡山県美作市で行なわれたトレーニングキャンプ。U-17とU-20の両方の指揮を執る吉田弘監督と話をした際、どちらのカテゴリーでやりたいかと聞かれ、自らひとつ上のカテゴリーでチャレンジすることを選んだ。

「レベルが高いところで経験を積むために、上のカテゴリーを選びました。U-20では最初は合わない部分もありましたが、ミーティングや練習の時も先輩達がアドバイスをくれたのでやりやすかったです。U-17と比べると、ひとりひとりの技術がより高くて、グラウンドの中で求められる判断のレベルも違いました」

 そして、満を持して臨んだU-20女子W杯ではフル出場を果たし、チームは史上最高成績となる3位。だが、「結果には満足していない」という。それは、世界と渡り合える手ごたえを得た反面、課題も多く得たからだ。

「試合を重ねるにつれて、できるようになったプレイが多かったことは収穫だったと思います。足もとに強く行くところや球際で身体を張れた自信はありますが、世界のスピードについていけないところがありました。自分はDFライン裏へのボールの対応が得意な方でしたが、ワールドカップだと裏に抜け出すスピードを持っている選手が多くて、手こずりました」

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