【日本代表】中村憲剛「南アW杯のときとは、個のレベルが明らかに違う」 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 南アフリカW杯後、特にチ-ムとしての成長が見られたのは、攻撃面だ。岡田武史前監督も当初はパスでつなぐサッカーを標榜していたが、なかなか点が奪えなかった。南アフリカW杯では、直前に戦い方が変更になったこともあるが、攻め手はカウンターとセットプレイしかなかった。だが今は、6点を奪ったヨルダン戦に代表されるように、攻撃のバリエーション、得点パターンともに増え、攻撃の迫力は明らかに増している。

「前回の予選では、相手に守られて、守られて、最後にようやく決める展開が多かった。決定力不足が課題だとずっと言われていたけど、今は相手に引いて守られても得点できるし、得点のバリエーションも確かに豊富になったと思います。それは、個人の力で点を取るとか、ひとりで目の前の敵を抜き切るとか、個の能力が飛躍的に高くなって、ひとりで勝負できる選手が増えたから。個のレベルが上がったので、チームの質も上がり、最終予選でも3-0、6-0というスコアで勝てるようになった。先日(11月14日)のアウェーのオマーン戦も、苦戦しましたけど、結局最後には2-1で勝ち切ってしまった」

 チームが向上したのは、個人の質がグレードアップしたからに他ならない。しかし、南アフリカW杯からわずか2年で、ここまで向上することを中村は想像できていたのだろうか。

「いや、ここまでは想像していませんでした(笑)。(内田)篤人がチャンピオンズリーグで戦っていたり、真司がマンUで、佑都がインテルでプレイしたりしている姿は、南アの直後は考えられなかった。そもそも南アのときは、真司はバックアップメンバーで、篤人はサブでしたからね。でも、彼らはチャンスをつかんで、成長していった。しかも、その経験を代表にしっかり還元してくれている。練習でも、海外で戦っている意識を持って厳しくやってくれるし、ひとつひとつのプレイに対しても、非常に貪欲にこなしている。彼らと一緒にプレイすることで、国内組の僕らもすごくいい刺激を受けている。そうした相乗効果というか、いい循環が今の代表チームにはできているので、全体的に個の質が高くなっているんだと思います。海外組の選手の経験値が、チームが成長するうえで大きなポイントになっているのは間違いないですね」

 南アフリカW杯後、アジアでは過去にない強さを見せつけてきた日本代表だったが、世界の中での日本の力は未知数だった。そして10月、その力を推し量るチャンスが巡ってきた。ヨーロッパの地で行なう、フランスとブラジルとの対戦である。試合前には、「世界を相手に、どのくらい戦えるのか。個人としてもチームとしても楽しみ」と中村も語っていた。その言葉からは「そこそこやれるぞ」という自信も垣間見えていたが……。

(つづく)

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