【日本代表】中村憲剛「南アW杯のときとは、個のレベルが明らかに違う」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 それが今回は、初戦のオマーン戦を3-0で勝利し、続くヨルダン戦は6-0と圧勝。中村が「横綱相撲」と表現したように、何ら危なげない試合を見せた。その際、中村はスタジアムからも以前と異なる空気を感じていたという。

「前回はギリギリの戦いとか、結構(周囲に)煽られて、(試合会場の)埼玉スタジアムも『生きるか、死ぬか』といった雰囲気になっていたんです。その分、僕らも厳しい戦いを予想してピリピリしていたと思います。でも今回は、最終予選という緊張感はあるけれども、以前のような切羽詰ったムードはなかった。逆に『どのくらいで勝ってくれるんだろう』という期待感のほうが大きく伝わってきて、(日本が)1点取れば、怒涛のように点が入るような、勢いというか、空気が充満していたんです」

 さらに、対戦相手にもこれまでにない変化が見られたと、中村は言う。

「今回の予選では、イラクをはじめ、どこの国も完全に引いてカウンター狙いだった。日本をすごくリスペクトしているというのが、相手のプレイから感じられたし、試合内容にも表れていた。前回の最終予選はここまでではなかった。アジアで日本は、そういうレベルになっているんだな、と思いましたね」

 ドイツW杯で苦杯を舐め、前回の最終予選でグループ1位の座を奪われた強豪オーストラリアでさえ、日本を警戒し、自らのホームにもかかわらず、引いて戦っていた。日本がそこまでの強さを見せ、アジアでリスペクトされるほどのチームになった要因を、中村はどう考えているのだろうか。

「僕は、南アフリカW杯のベスト16という結果が、今につながっていると思います。(本番直前に)メンバーもサッカーもガラッと変わって、(本田)圭佑がカメルーン戦で点を決めて勝っていなければ、難しくなっていたでしょう。でも、腹をくくって戦ったことでベスト16という結果を残せた。これで、日本人選手の評価が上がって、多くの選手が海外に出て行った。それに、ベスト16の風景を見られたことで、(選手みんなが)こういうところをもう少しがんばれば、さらに上に行ける、あと3つ勝てば決勝に行ける、という意識が芽生えた。そういう思いを持った選手たちが2011年のアジアカップで優勝し、チ-ムとしての自信が一層増した。(長友)佑都がインテルに行き、(香川)真司がマンチェスター・ユナイテッドに行くなどして、個が成長し、名実ともに優秀なタレントが増えた。ザッケローニ監督も、3-4-3とか、もっと独自色を出すのかなと思っていたら、日本のいいところをまずは引き出すことを優先してチ-ム作りをしている。そうして一試合一試合を無駄なく積み重ねてきた結果、今の自分たちの地位が築けているのだと思います」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る