【なでしこ】INAC、リーグ2連覇達成。
監督が絶賛した大野忍のキャプテンシー

  • 早草紀子●文・撮影 text & photo by Hayakusa Noriko

優勝の喜びを分かち合う昨季と今季のキャプテン、川澄奈穂美(左)と大野忍(右)優勝の喜びを分かち合う昨季と今季のキャプテン、川澄奈穂美(左)と大野忍(右) 10月28日、INAC神戸レオネッサがなでしこリーグ2連覇を達成した。ロンドンオリンピックで銀メダルを獲得したなでしこジャパンの面々7名を擁し、他にも韓国・アメリカからの外国人選手も躍動する、国際色豊かなチームだ。以前のなでしこリーグには見られた風景だが、現在、ここまでのサッカー環境を整えられているのはINACのみ。となればもちろん、『勝利』は当然のことと見られる。

 さらに対戦チームは、INACに徹底した対策を講じてくる。昨シーズンは澤穂希、大野忍、近賀ゆかりらが移籍してきたことで、どんなチームになるのか、周りも、本人たちも手探りだった。その後、ワールドカップ優勝を経て、日本女子サッカーはその存在を日本中に知らしめた。と同時に当然、INACのサッカーは注目を浴びることになった。その中で結果を出し続けることは、容易ではない。

 特に今シーズンは、予想外のことで苦しめられた。「考えられないことだった」と振り返ったのは、INACの星川敬監督。日テレ・ベレーザ時代からともに戦ってきた戦友であり、絶対の信頼を置く澤穂希が、めまい症で戦線離脱した。1ヵ月以上まともにボールを蹴ることもできない澤を見るのは初めてのことで、「落ち込んだこともあった」(星川)という。さらに、「得点王を取らせるつもりだった」(星川)U-20世代のエース・京川舞にいたっては、半月板損傷&前十字じん帯断裂&副じん帯損傷という全治6ヵ月の重傷を負った。

 だが、それらすべてが、選手たちを大きく成長させることにもつながった。

 優勝を決めた試合は、今シーズン唯一引き分けた湯郷ベルとの一戦。4-1という結果から見れば快勝というイメージだが、特に前半などは、ほぼ湯郷のゲームだったと言っていい。

 中盤にはなでしこジャパンのキャプテンを務めた宮間あや、ゴールマウスにはその守護神・福元美穂がいた。ここ数試合で、湯郷は『戦い方』を見出しかけていた。結果にこそ結びついていないが、劣勢に陥ってもシュートコースを切る動きだけは徹底していた。また、ルーズボールにも必ず絡めるようになった。さらにそこから攻撃に転じる際も、それぞれがビジョンを描いている。変わりかけた湯郷相手に、INACは押し込まれた。

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