【日本代表】ブラジルに大敗した本当の理由は監督にあり

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 後半の頭、ザッケローニは中村憲剛に代えて乾貴士を、内田篤人に代えて酒井宏樹木を投入。さらに後半17分には、長谷部誠に代えて細貝萌を入れている。ザッケローニは試合後「当初から思い描いていた交代だ」と、記者の質問には答えている。そしてさらに言えば、これらは4日前に行なわれた交代と基本的には同じものであった。

 フランス戦。ザッケローニは交代枠が6人あるにもかかわらず、4人しか代えなかった。そのうちの2人は後半41分。期待を込めての交代は実質2人で終わっている。その問題点については、フランス戦後に書いた原稿でも触れているので割愛する。見逃せないのは、ブラジル戦も交代の顔ぶれが一緒だったことだ。

 フランス戦とブラジル戦。試合展開は正反対だ。にもかかわらず、ザッケローニは同じ交代を行なった。このことから、交代が試合の流れを見て行なわれていないことが判明する。「当初から描いていた交代」と、自らも証言しているが、それは今に始まったものではない。彼がこれまでに行なってきた選手交代に目を凝らせば、使う選手は試合前から決まっているように見える。交代のアイデアは、試合の流れを見て練られたものより、試合前に練られたもののほうが圧倒的に多い。そこに意外性は全く存在しない。

 それはピッチに送り込む順番をあらかじめ決めていることを意味する。23人の代表メンバーには、使うべき順番、優先順位というものができあがっている。GKを除くフィールドプレイヤーは20人。15番目ぐらいまでは決まっていて、それ以降はその都度、調子等々を見て入れ替えるというやり方だ。

 16番目以降の選手に出番が回ってくることはまずない。サブの選手なら、そのことに気がついていないはずはない。今回の遠征には酒井高徳と佐藤寿人が追加招集されたが、使われる可能性が低いことは、ザッケローニ采配の過去に目を向ければ、ファンにも報道陣にも見えていたはずだ。

 この方法論は、岡田ジャパン、ジーコジャパンの時と同じだ。そしてそれぞれの日本代表は本番のおよそ半年前から失速した。岡田監督の場合は、南アW杯の直前も直前になって大手術を敢行。それまで"順番"の低かった本田を主役に据えて臨んだことが功を奏し、ベスト16入りを果たしたことは記憶に新しい。失速パターンにはまり込んでいた岡田ジャパンは、直前になってV字回復したわけだ。

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