【日本代表】ゼロトップのメリットは?大敗したブラジル戦で選手がつかんだ手応え (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 原悦生●撮影 photo by Hara Etsuo

 長谷部が言うように、試合の入り方に関して言えば、日本も悪くはなかった。フランス戦の反省を生かすように、守備では積極的に高い位置からプレスをかけ、攻撃では落ち着いてパスをつないだ。特に試合序盤は、完全に日本ペースだったと言っていいだろう。

 ところが、そんな流れに水を差されるように、12分に先制点を奪われ、しかも、その14分後に2失点目。こうなると、ブラジルに余裕を持ってゲームを進められてしまうのも仕方がない。ザッケローニ監督は1点ならともかく、早い段階に2点差とされたことを悔やみ、こう話す。

「すぐに追いつきたい気持ちが空回りした。自分たちの狙いから外れたプレイをしてしまった」

 結果的にさらなる失点を重ね、大敗を喫したわけである。

 とはいえ、「そんなにやられた感じはしない」という長谷部の実感も、あながち的外れや強がりとは言えないと思う。

 本田圭佑を最前線に置き、実質「ゼロトップ」の形で臨んだ日本は、その分、中盤で優勢に立ち、しっかりボールをつなぐことができていた。最終的なシュートにつなげる部分で物足りなかったのは確かだが、そこに至るビルドアップの部分では、かなり手応えのあった試合ではないだろうか。香川真司が語る。

「FWがいない分、何か違うメリットがある。中盤でひとりひとりが連動して、入れ替わり激しくボールを回せればチャンスになるのを感じた。そのなかで数回、前半にいい形が作れたのは確かだし、僕自身はもっとこういう形にトライしていく価値はあると思う」

 実際、ブラジルのマノ・メネゼス監督も「日本はいいチームだった」としたうえで、その要因として「ボールを長くキープされたこと」を挙げている。

 本当に日本の出来がよかったと言える時間は、前半の、しかも限られた時間だけだったのかもしれないが、強豪相手でもこうしたスタイルにトライしていくことには意味がある。ザッケローニ監督が試合前日に発した言葉が印象的だ。

「フランス戦の立ち上がりのように消極的になるのではなく、積極的にピッチ全体で日本の選手が戦う姿勢を見たい。それをしないと、どこが通用しないのか分からない」

 確かに、結果から見ればブラジルのディフェンスを崩し切ることはできなかった。中村憲剛が振り返る。

「うちが押し込んだときに(ブラジルの)ブロックがすごく低くて、ペナルティエリアの中に設定されていたんで、裏にスペースはほとんどなかった。パスを出したとしてもゴールキックになっちゃうようなギリギリのところ。そのなかで裏を狙うのは簡単じゃない。正直、相手の懐(ふところ)のなかでボールを回している感があった」

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