【日本代表】もっとやれたフランス戦。11年前とは時代が違う

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

ゴールをあげた香川に駆け寄る日本の選手たちゴールをあげた香川に駆け寄る日本の選手たち フランス戦の勝利を日本のメディアは「歴史的勝利」と報じたという。日本では大層盛り上がっていたと聞くが、ひとつ確実に言えるのは、フランス側はこれを「歴史的敗戦」とは捉えていないことだ。歓喜に湧く日本と同じ量のショックを味わっているわけではない。

 サッカーの親善試合ほど、解釈の難しいものはない。日本代表はいつも大真面目。絶対に負けられない戦いと称して真剣に戦うので、日本のファンには分かりにくい感覚かもしれないが、双方に思惑の違い、温度差がある。

 このフランス戦などはその典型的な試合だ。大真面目な日本に対し、フランスは"それなり"だった。

 試合後のデシャン監督は顔面蒼白では全くなかった。フランス人記者からの厳しい質問も皆無だった。「嬉しくない」「ガッカリした」とは言いながら、一方で、「最悪、引き分けが理想の試合だった」とも述べている。

 フランスはスペインとの一戦を4日後に控えていた。W杯欧州予選。欧州チャンピオンであり世界チャンピオンとの大一番だ。これは世界のサッカー界的にも大きなニュースだが、日本では世界情勢と全く別の次元で日本代表の話をしようとする。

 日本戦はその直前の親善試合で、彼らにすればスパーリングマッチというべき試合だった。絶対に負けられない戦いでは全くなかった。スタメンの顔ぶれを見ればそれは一目瞭然。ベストメンバーにはほど遠い顔が並んだ。

 メンバー交替も後半の頭に3人替えをするなど、規定の6人枠をフルに使用。試合の行方に関係なく行なわれた。当初の計画をそのまま実行したという感じだった。後半17分に最初の2人(細貝、乾)を、後半41分に次の2人(高橋、内田)を送り込んだザック采配とは、メンバー交替の意味が根本的に違っていた。

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