2012.10.12

元日本代表MF、バルセロナへ。
第2の人生をスタートさせる廣山望の思い

  • 田崎健太●取材・文 text by Tazaki Kenta
  • photo by Tazaki Kenta

現在は帰国中の廣山。年末からスペイン、バルセロナで指導者を目指す
「アメリカに来てみて、本当にリフレッシュできたというか、自分らしさを再認識した。サッカーでも、サッカー以外でも思っていた以上の手応えがあった。すごく納得がいった」

 リッチモンドとの契約は2年、2012年シーズンまでとなっていた。この契約が終わった段階で、引退しようと心に決めた。そして、昨秋のことだ。シーズンが終わって帰国した時に、日本サッカー協会の人間に連絡を取ると、こう尋ねられた。

――お前、指導者やる気はあるのか。

 その時、廣山はとっさに「興味は持っているし、やりたいと思っています」と答えた。アメリカに行くまでにB級のライセンスを獲得していたものの、引退後の道は決めかねていた。スポーツ指導者海外研修員として、スペインサッカー連盟へ派遣することができると教えられた。

 これで彼の心が決まった。

「指導者になるというよりも、スペインに行くという話だったので即決しました」
 と廣山は微笑んだ。


 最後のシーズン――終盤に向かう中、廣山はプロ入りしたばかりのことを思い出した。

「ジェフには、マスロバルやルーファーなどさまざまな国から選手が来ていました。彼らはどんな気持ちで日本に来ていたんだろうって。マスロバルなんてレッドスター(ベオグラード)で10番をつけていた選手で、欧州のビッグクラブでやっていてもおかしくなかった。当時の国の情勢がなければ日本には来なかった。ぼくたちは彼らに助っ人、というか“お客さん"というイメージしかなかった。彼らにとっても人生の貴重なひとときを過ごしている訳だから、もっとホスピタリティを持って受け容れてあげればよかった。もっともJリーグ自体が若かったので、そんな余裕はなかったのかもしれませんけど」

 そんな風に思うのは、アメリカに来てから、特にピッチの外で若い選手に助けられたからだ。

「僕がチームで一番のベテランなのにみんなが気をつかってくれる。アメリカ人のベテランがJリーグに来たとしたら、日本の若い選手はこんな風に助けてあげられるだろうかって思うんです」


 今年の年末を目処に、廣山は一年間の予定でスペインに旅立ち、指導者としての研鑽を積むことになる。その候補には、エスパニョールなど、バルセロナにあるクラブが挙がっている。

 近い将来、指導者としての廣山の姿を見ることができるだろう。国際的な大舞台で活躍できるだけでなく、リッチモンドの若手選手のように、ひとりの人間として当たり前のことができる――そんな選手を廣山が育ててくれる気がしている。

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