【日本代表】フランス戦とブラジル戦。カギを握るのは本田、香川ではない (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by GettyImages

 想起すべきはロンドン五輪のスペイン戦だ。日本が番狂わせを演じた理由はプレッシングだった。スペインが歯車を狂わせることになったのは、それこそが最大の原因だ。日本がもし後ろを固める守備的なサッカーで臨んでいたら、スペインはマイペースでプレイできたはずだ。持ち前の攻撃的サッカーは保ちやすかった。パスが綺麗に回る環境が万端整っていれば、彼らは精神的なノリを高めながらプレイすることができだろう。

 強者がこうなると手は付けられない。強者と戦うときの鉄則は、強者を攻撃的にさせないこと。弱者は怖がったらダメだ。番狂わせの可能性は減る。

「攻撃的守備」を開始早々から仕掛け、スペインを不快な気持ちに追い込んでいった関塚ジャパンの戦い方は、大いに参考にすべきである。

 なぜ彼らがそれに徹することができたかと言えば、前評判が低かったからだ。関塚ジャパンの選手たちが、自らを弱者だと認識していたことにある。

 プレッシングをキチンと真面目に行なえるか否かは、すなわち弱者の気質を推し量るバロメータといえるが、ザックジャパンにその自覚はあるだろうか。強者の立ち位置に慣れてしまっていやしないだろうか。

 ブラジル戦は、相手ボールの時間が長い中で推移する。いかに奪うかについて、ボールをいかに繋ぐかということ以上に考える必要がある。従来と立ち位置は異なる。

  たとえば、4-2-3-1の3の左を務める香川は、ブラジルの右サイドバック(ダニエウ・アウベス)にキチンとプレスを掛ける必要がある。それを忘れ、通常の試合で見られるように、マイボール時の居心地の良さを求めて真ん中に入り込む時間が長くなるようだと危ない。香川のポジショニングは、日本代表の心構えを知るバロメータになる。僕はそう思う。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る