【リトルなでしこ】苦い敗戦。選手が感じた「超攻撃型」チームに足りなかったもの (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko


 そしてその不安は現実のものになってしまった。失点の余波は想像よりもチームに重くのしかかっていた。これが「超攻撃型」のチームのもろさなのかもしれない。同時に、だからこそ十八番である攻撃で試合を振り出しに戻そうという焦りが生じたのだろう。

 攻め込んでは跳ね返され、セカンドボールを拾われ続けながらも、また奪い返す。日本は時間をかけてジワリジワリとガーナゴールへ攻めこむ。ポジションをズラしてスペースを生み出すやり方は通常通り。しかし、皮肉にもこの遅攻は、寄せの速いガーナに守備陣形を整えさせる時間を与えてしまっていた。

 そんな中、人一倍苦しみもがいていたのが1トップに入ったFW増矢理花だ。得意の裏へ飛び出す動きのタイミングも、スペースも奪われた増矢は前線で敵に囲まれながら孤立するしかなかった。増矢は振り返る。

「今までで一番マークがキツかった。周りに自分しかいない感じ。だから自分が裏に抜けるんじゃなくて、自分がボールを受けて、空いたスペースに走り込む選手が必要だった」

 マークに苦しんでシュートを打てなかった第2戦、ニュージーランド戦の教訓は胸に刻んだはずだった。しかし、ガーナ戦でも前を向いてボールを持つことは許してもらえなかった。そこには、メンタルにも問題があったと増矢は言う。

「浮き足だっていたと思う。1点入れられてから焦るんじゃなくて、もっと前から気持ちでいかないと。そもそも1点取られるっていう展開も初めてのことで......」

 このチームは今大会の予選を兼ねていた昨年のAFC U-16女子選手権でも無失点で優勝を飾っていた。とにかく失点に慣れていなかった。

「相手の寄せが速いから、ビビった自分がいました......」

 増矢がこう言うように、相手ではなく、自分の弱さに負けた。それがわかっているからこそ、より一層悔しさが募る。最後の最後までボールを支配し続け、ゴールを狙い続けた。それでも、ガーナゴールを揺らすことなく無情のホイッスルが鳴った。

「想像以上に、自分自身もチームの組織力も全然通用しなかった......」とは、試合終了直後にその場に倒れ込んでしまったキャプテンの成宮唯。優勝への思いが強かった分、敗北の反動も大きかった。仲間たちから抱えられなければピッチから降りることもできないほどのショックが彼女を襲っていた。

 増矢もまたピッチに座り込んだままだったが、ピッチを降りてしばらくするとこう話した。

「次は絶対に負けたくない。この負けをきっかけに強くなりたい。この負けを糧にしたいと思ってます」

 すでに前を向いている選手たちがそこにはいた。もちろん、気持ちの整理が完全についている訳ではない。それでも、ここからさらに成長していきたいと思わせてくれた大会であったことは間違いない。

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