【日本代表】格の違いを見せるも辛勝。
イラク戦で感じた物足りなさの正体

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 長谷部誠が振り返る。

「センターバックがフリーになって(ボールを持って)いても、中盤が相手にマンマークされていて、そこからパスを出せなかった」

 そんな相手の狙いにはまりつつある悪い流れを変えたのは、指揮官から送られたひとつの指示だった。ザッケローニ監督は言う。

「ビルドアップのときに、センターバックである伊野波(雅彦)と(吉田)麻也の距離が近すぎた。ふたりがもっと離れてサイドバックのようなポジションを取り、できるだけ早くサイドに展開してほしいと伝えた」

 つまり、2ボランチである遠藤保仁と長谷部、さらにはトップ下の本田が完全にマンマークされている状況で、中央から攻撃を組み立てることは難しい。ならば、比較的自由にボールを持てるセンターバックが左右に開くことで、そこからサイド攻撃につなげようというわけである。

 この狙いは、ある程度の効果は見せた。実際、前半なかば以降、日本は再三サイドから厚みのある攻撃を仕掛け、イラク陣内奥深くへ攻め入った。

 とはいえ、そのほとんどが、最後は相手DFにクロスをカットされて終わっている。すなわち、完全には相手のマークを外し切れていなかったということだ。決定的なチャンスまで至ったのは、15分の清武弘嗣のヘディングシュートと、69分と80分にそれぞれ本田がヘディングシュートを放った場面くらいだろう。

「(問題は)決定力のところ。決められるか、決められないか。死角に入って(相手の視野から)消える動きをしたり、パスをもらうところまでは狙い通りにできていた」

 決定機を迎えながらそれを生かすことができなかった以上、本田がそう言って悔やむのも無理はないが、徹底して守備を固める相手からゴールを奪うには、やはりシュートチャンスそのものが少なすぎた。

 厳しいマンツーマンというのは、裏を返せば、効果的なパス・アンド・ゴーを繰り返すことで自然とスペースが生まれてくる。日本が目指すサッカーのスタイルを考えれば、むしろ攻略しやすい、あるいは攻略しなければならない守備戦術であったはずだ。

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