【日本代表】凡戦は想定内。ザックが目前のイラク戦より重視したもの (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 実際、指揮官にとって、一緒にプレイした時間の短い選手が数多くピッチに立てば、円滑さを欠く結果になることは想定内だった。
「私のサッカー観の中で重視しているのは、スピード。特に連係時のスピードだ。そのためには、ある程度の慣れが必要になる」

 8月のベネズエラ戦というのは、「慣れ」のある従来の主力メンバーの間には、すでに連係が確立されていることを証明した試合だった。しかし、来年のコンフェデレーションズカップ、さらには再来年のW杯本番を見据えれば、「慣れ」に甘えて現段階でメンバーを固定してしまうことは得策ではない。当然、そこには新たな刺激が必要だった。

 ザッケローニ監督はベネズエラ戦で担保を得たことによって、次の一手、すなわち戦力を底上げし、チームとしてのさらなる伸びしろを生み出すことに着手し始めたのだろう。

 この日、日本代表が見せた雑な打ち合いは、決してアジア王者にふさわしいものではない。だが、内容的に物足りない試合だったからといって、新戦力の積極的な起用をためらえば、その先に待っているのは停滞である。

 百戦錬磨の指揮官は、こともなげに言う。
「直後に大切な試合(W杯最終予選)が控えている場合、親善試合では(チームのパフォーマンスが)高みのところまで行き切らないというのはよくあることだ」

 ときに退屈な試合が生まれることになっても、未来への投資を止めるべきではない。

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