【日本代表】吉田麻也「五輪を経験して
ザックジャパンの強さが身にしみてわかった」

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 ラインの上下については、コンビを組むセンターバック、サイドバックとの意思疎通が重要になってくる。とりわけ、相棒である今野と呼吸を合わせることが大事になるが、互いに要求している点などはあるのだろうか。

「今はないですね。ともにチームのコンセプトは頭の中に入っているし、やるべきことをお互いに理解している。対戦相手が選手を入れ替えたり、システムを変えたりしたときなどは、相手選手のチェックにどっちが行くのか、たまに迷うことがありますが、そんなときもその場で話をしてすぐに修正し、対応できています。そうしたことを繰り返しながら、守備の精度を高めてきた感じですね。(今野は)僕とはタイプは違いますけど、基本的に前につないでいく意識が高くて、そこは僕も同じスタイルなので(パートナーとしては)非常にやりやすい。かといって、コンちゃん(今野)に引っ張ってもらおうという意識ではやっていません。むしろ、(自分が)チームを引っ張っていく気持ちでプレイしています。僕はそういうタイプなんで」

 だが、吉田と絶妙なコンビを見せている今野は、9月11日に行なわれるW杯最終予選の第4戦、イラク戦では累積警告のために出場できない。さらに、出場経験豊富な栗原勇蔵も出場停止。そのため、8月15日に行なわれたベネズエラ戦は、吉田の「パートナー探し」がひとつのテーマとなった。前半は伊野波雅彦、後半からはザックジャパンになって初めて招集された水本裕貴が起用された。

「イノくん(伊野波)とは何度か組んでいるので、それほど問題はありませんでした。ミズくん(水本)とは本当に久しぶりだったので、ラインの上げ下げやスライドなど、細かい部分での確認がかなり必要でしたね。試合中も頻繁にコミュニケーションを取りながらやっていました。結果的には、ともにいい面も悪い面も出たのではないでしょうか。何はともあれ、イラク戦まであまり時間がない中、その試合の前に一緒にプレイできたことは大きかったです」

 試合後、吉田は淡々とそう語った。しかし、見た目には決して満足できる出来ではなかった。イラク戦に向けて不安は募るが、イラク戦に限らず、今後もセンターバックのパートナーが負傷や累積警告で欠けることは十分に考えられる。攻撃陣以上に意思疎通が重要視されるポジションで、吉田自身、危機感はないのだろうか。

「ザッケローニ監督は、レギュラーとサブを分けることなく練習しているので、誰が出場しても、やり方やコンセプトもほとんど変わらずにプレイできます。それは、このチームの強みのひとつだと思います」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る