【ヤングなでしこ】
田中陽子が左右両足FKを身につけた「きっかけ」

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

 崩してはいるのだが、決めきれない。スイス戦で日本が浴びせたシュートは22本にも及ぶ。もちろんスイスのGKがあたっていたことも決めさせてもらえなかった要因のひとつではあるが、ゴール前が大渋滞をしている状況でやみくもに突っ込んでいっても、ゴールを割るのは難しい。有効なミドルシュートが放たれれば、相手も守りにくくなるはず。自分たちのリズムの中にこそ、より有効に、より確実に得点できる場面を見極める力を養えるチャンスが潜んでいるのだ。ポテンシャルの高い選手たちが揃っているだけに、さらに高い質を求めてほしい。

「もっとサイドを活かしていければ、点も取れる」とは吉田監督。指揮官はピッチ上での細かい部分は選手たちに任せるというスタイル。修正はここからの3日間で行なわれるはずだ。

 これで、準々決勝は日本vs韓国というカードに決定した。もともと韓国には本大会の出場権はなかった。しかし、この大会が急遽日本で開催されることになり、予選を兼ねていたAFC U-19女子選手権で優勝していた日本が、開催国として出場することになり、日本が獲得していた出場権が第4位につけていた韓国にスライドしたのである。

 しかし、それが決まってから韓国は、全力で強化をはかってきた。本大会では初戦のナイジェリアに敗戦するも、そこから2連勝でグループ2位に入り、調子を上げてきている。第3戦にいたっては、強豪ブラジルを2-0で退けた。

 気をつけなければならないのがカウンター攻撃。イタリア戦、ブラジル戦でも韓国の得点はカウンターから生まれた。トップのチョン・ウナの決定力は要注意。さらにイ・グミンの突破にも気を配りたいところだ。そして日本が崩さなければならないのが長身キム・ジヒェが率いるDFの壁だ。

 グループリーグでもスイスやニュージーランドの引いた守備をなかなか崩せなかった日本。前に出て来てくれる相手であれば、猶本、田中陽、柴田といった豊富な運動量を誇る選手たちの懸命なプレッシングで十分に対抗できる。しかし、韓国が自陣を固めてくれば、その牙城を崩すのは容易ではない。前がかりになったところをカウンターで沈められ、焦って自滅という形だけは何としても避けたい。

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