【なでしこジャパン】アメリカ人記者が振り返る五輪決勝

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao
  • photo by Hayakusa Noriko/JMPA

 また、米バッファロー・ニュース紙のジェリー・サリバン記者も、なでしこに同情する。

「正直、ゲームを支配していたのは日本だった。アメリカは随分と運に恵まれた。自陣に押し込まれていた時間も長かったし、GKソロの2本のファインセーブもあった。日本にとっては酷な敗戦だっただろう。日本はときにフィジカルの弱さを嘆いているようだが、そんなことはどうでもいい。大事なのは、どうゴールに向かうかということで、日本は90分常にゴールを目指していただろう」

 そして、個人としては大儀見優季と大野忍の2トップを称え、決勝の内容そのものがすばらしかったと語った。

「オオノは小柄だがスピードもあってすばしっこく、アメリカはかなりてこずっていた。オオギミは前線でボールを受け攻撃の起点となっていただけでなく、常にアメリカのゴールを脅かしていた。世の中にはオリンピックというだけで、その内容や結果を過大評価する向きもあるけど、この試合はホントに興奮したよ。今大会、準決勝のアメリカ対カナダ(延長戦の末4-3でアメリカが勝利)は女子サッカー史上最高のゲームという評価を受けたが、決勝もそれに匹敵するすばらしい内容だった」

 米メディア関係者も指摘したように、日本の敗戦は残念なものだった。ただ、アメリカのエース、ワンバックは「人生では勝とうとしていつも勝てるわけじゃない。栄光をつかむためには、挫折や失敗をいとわないことも大事なの」と語っている。昨年のW杯で日本に敗れたことが、新たなモチベーションになり、ロンドンでの金メダルという結果につながったというのだ。

 W杯優勝に続き、ロンドンで金メダル獲得では、物語があまりに出来すぎではないか。日本の女子サッカーの発展、なでしこジャパンの進化ということを長い目で見れば、称賛されながらも敗れ、目指す道が残った、すばらしい敗戦は最高のシナリオだったともいえるのではないだろうか。

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