【五輪代表】メキシコに完敗も「銅メダルはとりたい」と強い意欲

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Hayakusa Noriko/JMPA

 というのも、エジプト戦の1点目などはその典型なのだが、これまでなら奪ったボールを少ないパスで前線の選手へつなぎ、チャンスを作り出すのが日本の「型」だった。ところが、この先制点の場面では、じっくりと右から左、左から中央へと動かされたボールが、最後に大津へと渡っている。つまり、得点自体はスーパーゴールだったのだが、そこに至る過程において、日本は自分たちの「型」に持ち込めてはいなかったのだ。

 メキシコは、日本が得意なカウンターを発動するために必要なスペースを、確実に消してきた。それによって、日本は攻撃に時間をかけさせられていた。そこには、一度遅らせてしまえば、日本の攻撃は怖くない。そんな分析もあったのだろう。関塚隆監督が語る。
「メキシコはうまくスペースを消してきて、永井(謙佑のスピード)も消された印象がある。今日の試合では、メキシコのほうが上手だったと思う」

 メキシコにしても、縦にスピードアップしようとしたときには、かなりの数のパスミスが生じていた。ショートパス志向のチームにこれだけミスが出れば、普通は「日本の型」との相性はいいはずである。しかし、メキシコは、決して日本が得意とするパターンに持ち込ませてはくれなかった。キャプテンの吉田麻也は、「1点入った後も、自分たちのリズムでプレイできずしんどかった」と振り返る。

 同点に追いつかれた後の37分、清武が中央に切れ込んでシュートを放ったように、前線の選手が一気に攻め切る日本らしい攻撃もあるにはあったが、その数は極めて限られていた。要するに、試合はメキシコの目論見通りに進んでいたということだ。

 残念ながら、それを打ち破るには、日本選手の動きが重すぎた。山口螢は言う。
「自分たちが前回(五輪直前の親善試合で)対戦したときのように、前からあまり(守備に)行けず、相手にボールを持たれる時間も長かった。試合前から、『オレらは走らないと勝てない』という話をしていたが、今日は走れなかった」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る