【なでしこジャパン】 「日本封じ」に対応できず。
フランス戦であぶり出された修正すべきポイント

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

 とはいえ、"だからこの内容でいい"はずはない。フランスの個の力を、なでしこジャパンの現状のプレスや連係力では止められないということがハッキリした試合でもあった。両サイドをこうも簡単に使わせてしまっては守備陣も苦しい。ひとつには相手の中盤を比較的自由にさせてしまったことに原因がある。

 これについては、ラインごとのプレスに課題を残した。中でも、自分たちの4-4-2システムがハマらない場合の相手の1・5列目の選手のケアは最重要課題だ。が、これほど課題が顕著に表われたのだから、選手たちはかえって修正すべきポイントがわかりやすくなっただろう。初戦のカナダや第2戦のスウェーデンに対しても、こうした修正は有効になるはずなのでしっかりと改善しなければならない。

 攻撃においては、前半に川澄奈穂美のボールキープから、澤穂希、大儀見優季らがゴール前まで迫ったシーンや、前半終了間際には宮間あやのFKが右ポストに弾かれ、こぼれ球を狙った澤のシュートが今度は左ポストに嫌われるという形も見られた。だが、それ以外には決定機らしい決定機を生みだせずに終わった。

 6月のスウェーデン遠征でのアメリカ同様、フランスもまた、しっかりと日本を研究してきており、日本は手も足も出ずに分析してきた相手に軍配が上がり続けている。日本の良さを消すために相手がしてきていることは立ちあがりからの厳しいプレスと、DFラインの裏狙いと、かなりわかりやすい。だが、それでも後手に回ってしまうのが今の日本だ。おそらくオリンピックではほぼすべての対戦チームが、同じような戦略をとってくるだろう。この"日本封じ"への対策もそろそろ見せてもらいたいものだ。

 気になるのは佐々木監督と選手たちの認識の差だ。「宮間―大儀見、宮間―大儀見と単調になり過ぎた。もっと中盤でタメを作って崩して仕掛けないと......」と語ったのは指揮官。

 一方、大儀見は正反対の印象を持っていた。「(相手に)引き込まれて押し返したときの速い攻撃にチャンスがあった。全部遅攻になってしまうと相手も守りやすい。要所要所に速攻を入れていけばよりゴールに近づける」(大儀見)。宮間と大儀見は、単調にしているつもりはなく、速い攻撃へのタイミングを模索していたのだ。このイメージの差をすり合わせることも初戦に向けて必要だろう。

 この試合には他にも指揮官が判断したい要素がいくつかあった。ケガ人の回復具合もそのひとつ。澤、岩清水梓は復帰後初のフル出場となった。プレイ精度にはまだ改善の余地はあるが、90分間のプレイに対する不安はなさそうだ。そして67分からはこれもケガ明けの岩渕真奈が投入された。昨年のワールドカップ以来、約1年ぶりの登場だ。しかし、岩渕の先には1m87㎝のセンターバック、ルナールが山のごとくそびえていた。

「裏に抜けるタイミングは自分なりにこだわりがあったんですけど、相手は足が伸びてくるし、日本で通用することがフランスには通用しない部分があった。でも今持ってる力は出し切りました」(岩渕)。まだ本調子ではないが、復帰をアピールする22分間だった。

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