【五輪代表】W杯共催から10年。韓国サッカーに見る育成システムのスピード感 (3ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yosshizaki Eijinho
  • photo by AFLO

 そこで文化の近い日本のコーチが多く採用される状況に。韓国の監督・コーチ陣にJリーグ経験者が増え、コミュニケーションが取りやすい点も要因のひとつだ。

 アテネ五輪日本代表、ジュビロ磐田、ヴィッセル神戸での指導を経て、FCソウル在任2シーズン目を迎えた菅野淳コーチは韓国選手の印象をこう話す。

「1対1の状況でボールに集中する強さ、体がぶつかりあった際の強さはものすごい。もう少し周囲の状況が見えたり、スピードの緩急がつけられたら、いいタレントが出てくると思う」

 ヴォルティス徳島に6年在籍した、カンウォンFCの山田庸フィジカルコーチの意見も同様だ。

「筋肉の量、体の強さはものすごい。けれども"ボールを受ける際の体の向き"など、ちょっとした知識の指導をあまり受けていないという印象。こういった点が改善されると、まだまだ伸びしろはあるなと感じる」

 こういった証言は、いまだ韓国の育成が"改革の途上"にあることを表している。大韓サッカー協会は98年のフランスワールドカップでの惨敗をきっかけに、10カ年計画の「2010年プラン」を強烈に推進してきた。それまでのスパルタ教育や勝利至上主義を改め、小中高の公式戦のリーグ制施行などを徹底している。

 この状況での"結晶"とも言えるのが、ロンドン行きのメンバーに選ばれたチ・ドンウォン(サンダーランド)だ。韓国のクラブユース育ちの第一世代として、2011年にチョンナムからプレミアリーグ移籍を果たした。韓国フル代表にも19歳にしてデビュー。7月6日のオリンピック代表のトレーニング後、こんな話をしていた。

「中・高時代に韓国で受けた指導は、今の自分にとってすべての礎(いしずえ)になっています。高校時代からプロの2軍の試合に出場できて、プレッシャーを経験できた。食事の面でもしっかりとした管理がなされていましたし」

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