【なでしこジャパン】アメリカに惨敗して鮮明になった選手たちの「危機感」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

 中盤の攻守のバランスは日本にとっては生命線でもある。そこからひずみが生じ、最終ラインで1対1の勝負に持ち込まれてしまってはどう見ても不利だ。

「2対1の数的優位な状況を作ることも大事。でもやっぱり最後は1対1の勝負。特に私はスピード面では相手と大きな差があるので、そこのところは力をつけないと......」(矢野)。

 自覚があるだけに、まざまざと見せつけられた現実に悔しさは募る。1対1での強さが必要不可欠なのはこれまでの戦いでも幾度となく痛感してきた。理想は1対1で負けないことだが、今日明日ですぐに成果が出るものではない。ならば、やはり日本の十八番であるプレスで、相手を先にハメていくしかない。

 アメリカ戦ではこの日本の良さを消されてしまったが、この点については続くスウェーデン戦での改善が十分に期待できる。より重症と思われるのは、想像以上の厳しい展開になったゲームに振り回されて、最後まで修正の糸口を見出せなかったことだ。後手に回った状況を打開することができなかった。そして、それは攻撃についても同じだった。

 前半26分の永里優季のゴールはこれまでに何度も宮間と話し合って、実践してきた形からのもの。宮間のCKは相手選手に当たるも大野忍がカバーし、すかさず宮間へ。ダイレクトでニアを狙ったボールに永里が反応した。宮間、永里の両者だけでなく、大野を含めた3人のイメージに全くズレが生じていないからこそ生まれたゴールだ。

 しかし、これはセットプレイ。流れの中からとなると、チャンスは明らかに少なかった。ボールも人も動かせない。いや、動いてはいるのだが、"効果的"ではなかった。ここ!というところに人がいないのだ。これでは、攻撃のパターンも限られてしまう。

 アメリカは徹底的に日本を研究していた。攻守の切り替えの際には、一度ターゲットに預け、再び戻して鋭いパスでスペースを突くという狙いがあった。何より、「私たちはこうやって"日本封じ"をするんだ」という高い意識があった。

 対して日本はどうだったか。対策を練ってくるであろうアメリカとの新たな戦い方が曖昧だったのではないか。1対1の場面で突破を止めたり、スピードを遅らせたりと、奮闘はしていた。が、その後、先にボールを拾うのはいつもアメリカだった。両者が倒れても、先にアメリカの選手が立ちあがってボールをキープする場面が何度もあった。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る