【なでしこ】澤穂希がスタメン復帰も、常勝・神戸が上昇チーム狭山に苦戦 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

 とにかく攻めきれない。神戸の視点からいえば、「決定力が欠けていた」となるのだが、それだけではない。狭山の守備意識が非常に高かったのだ。

 今年の狭山はひと味違う。やみくもに引いて守るのではない。ラインをやや高く保ち、相手との間合いをしっかりとはかる。誰が第1ディフェンスに入るのか、誰がカバーに入るのか。共通認識ができているのだ。前節の日テレ・ベレーザ戦でもその守備はベレーザ攻撃陣をイラつかせていた。

 狭山のセンターバックの柴田里美はこう語る。
「お互いにすごく話をするようになった。最終ラインはひとつ前のポジションの選手と。中盤の選手はまたその前のポジションの選手と、という感じで、チーム内で話をしない人はいない。それが結果につながっていると思います」

 狭山はほとんどの選手が仕事をしながらプレイをしているため、練習時間も限られ、さらに練習場所も定まっていない。前節のベレーザ戦後には「ピッチがその時間しかおさえられなかったので、これから戻って練習なんです(笑)」(渡邊英豊監督)と、慌ただしく試合会場を後にしていた。

「発展途上のチームだからこそ、求められたこと、やったことが形になっていくことで自信がつくのも早いんです。今、すごく楽しい」(柴田)。

 狭山は開幕から強豪との戦いが続いた。開幕戦、浦和レッズレディースには0-5で大敗。課題を修正して臨んだベレーザ戦では0-3。だが、手応えも少しつかんだ。さらに修正を重ねた神戸戦では3失点するも、2ゴールを加えることができた。

「この3連戦で自分たちは成長できるって思ってました。ここからは勝点を積み上げたいんです!」(柴田)。一日一日の成長を感じる日々。2012シーズンは狭山にとって転機になるかもしれない。そんな予感を感じさせる戦いだった。

 オリンピックを迎える今年は、女子サッカー界にとってビッグイヤーである。けれど、大切なのは、オリンピックでどんな結果が待っていてもそれが終わった後のなでしこリーグだ。そこで魅力あふれるサッカーを披露できれば、本物。必要なのは、見せ物ではなく見る者を熱くさせるサッカー。

 この日戦ったINAC神戸とAS狭山、それぞれの立場と戦い方は違えども、常勝チームと上昇チームの激しい駆け引きがあった。今年のなでしこリーグは、おもしろいシーズンになりそうだ。

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