【五輪代表】新戦力が躍動。既存メンバーに宣戦布告どころかダメ出し! (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Nikkan sports

 もちろん、仙台も後半からメンバー全員を入れ替えたという事情もあり、前半との単純な比較は難しい。それでも、関塚監督が「前線の4人の関係は、後半のほうがよかった」と話したように、U-23代表のコンビネーションがよくなっていたのは、明らかだ。後半、U-23代表に1点が入ったことは、決して偶然ではない。

 と同時に、後半のメンバーから感じられたのは、既存の顔ぶれに割って入ろうとする、ギラギラとした野心だった。運動量が多くなり、パスワークが向上したことに加え、球際の争いなどで戦う姿勢を強く見せていたのも、彼らのほうだ。大前が語る。
「ずっとオリンピックに出たいと思っていたし、このタイミングで初めて呼んでもらえて、やっぱり出たいと思った」

 DFラインの裏へ飛び出す得意の形で、決勝点を決めた宮吉も、「いいところを少しは出せたと思うが、チーム(U-23代表)に入っていくにはまだまだ」と控えめに話しつつも、ロンドン五輪への意欲は隠さない。
「オリンピックは今回逃したら、次は(年齢制限で出場資格が)ない。可能性がある限り、狙っていきたい」

 また、さらにはっきりと、しかも具体的に五輪出場への意欲を示したのは、攻撃の組み立て役を担った小林だ。
「最終予選を見ていて感じたのは、パスのテンポがよすぎる、ということ。きれいにつなぐだけでなく、もっと相手を食いつかせるドリブルとかがないと、相手は崩れない。それをボランチがやれれば、前線の選手はもっと仕掛けられるはずだし、そういう役割を自分がやれたら、と思う」

 この先、ロンドン五輪までの間、強化のためのまとまった時間を作るのは難しい。現実的な戦いを考えれば、五輪本番でも、最終予選のメンバーを中心に据えざるをえないのかもしれない。

 だが、この日の前半を見る限り、従来の顔ぶれで戦うことが、必ずしも安定をもたらすとは思えない。

 チームに取り込む時間がないからと後ろ向きになるのではなく、むしろ時間がないからこそ、新戦力が発するエネルギーをうまく取り込みたい。それこそが、短期間でチームを強化するためのカギではないかと思う。

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