【なでしこジャパン】成長を実感。DF熊谷紗希がアメリカ戦でつかんだ手応え (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

「前は身体を当てに行って、相手の軸をブラすつもりがその段階ですでに自分の方がブレてたりすることも、実は多かった(苦笑)」

 そう話していた熊谷だが、しかし、この試合は違った。昨年のアメリカ戦で絶対的な"差"を見せつけられたことで芽生えた向上心。個を上げて、再びなでしこに戻ったときには必ずチーム全体の底上げとなる。具体的なイメージがともなった熊谷の挑戦がようやく、形に表われはじめた。

「読みと身体の当て方については、ワールドカップからずっとやってきたことだったので自信を持ってやれた」

 そんな熊谷との絶妙なバランスでアメリカに立ち向かったのが、矢野喬子だった。同じ浦和レッズレディースでプレイをした元チームメイトだ。

 矢野はワールドカップで出場機会を得ることができなかった選手。アルガルベカップでは招集メンバーから外れていた。若手も成長してくる中、ここは踏ん張りどころ。熊谷とともに、アメリカの強力2トップを全身を投げ出して封じ込めていた。熊谷とは互いの特徴やクセを知り尽くしている同士、信頼感がプレイにそのまま現れていた。

 それでも、後半は徐々にアメリカに攻め込まれ、72分にはアンラッキーともいえるゴールをモーガンに奪われてしまった。いくら安定感が生まれてきた守備陣とはいえ、世界ランク1位のアメリカを相手に90分間とおして圧倒できるはずがない。

 想定内のガマンの時間とはいえ、選手たちも改善すべきところがまだ数多く存在することがわかったはずだ。簡単なミスの連続を解消し、勢いづいた相手の流れを切って、攻撃へと反転する。それらの課題を克服していきながら、チームは成長を遂げていくのだ。まだまだ伸びしろはある。

 何故か節目節目で対戦機会のあるアメリカとの試合、今回はドローとなったものの、かつて感じた差は確実に縮まりつつある。

 特に、熊谷を含む昨年のアメリカ遠征を経験した選手たちにとっては、実りを実感できる試合となったのではないだろうか。

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