【なでしこジャパン】人材難のサイドバックに待望の新戦力。有吉佐織が代表定着を狙う (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

「チャレンジメンバーのときは、とにかく自分のいいところをアピールすることが一番大事だった。思いっきりぶつかっていけた」と有吉は言う。

 ロンドン五輪の代表枠「18名」に入るには複数のポジションをこなせることが必須だ。加えてサイドバックでのプレイが計算できる選手となれば、当選確率はグンと高くなる。サイドバックの担い手としては、現在のレギュラーである近賀ゆかり、鮫島彩のふたりに加え、守備のスペシャリストである矢野喬子と本来は中盤の選手である上尾野辺めぐみがここ数年は試され続けている。和歌山キャンプでは、そこに有吉、南山千明、中野真奈美らが試された。

 有吉は、これまでにもチャンスはあったが、ボーダーライン上を行ったり来たりという状態だった。しかし合宿でのプレイが評価されポルトガル遠征で晴れてなでしこ入りすると、アルガルベカップで左右両方のサイドバックとして計3試合に出場。そのうちデンマーク戦と決勝のドイツ戦はスタメンをゲットした。もちろん、新戦力としてチャレンジの機会を与えられてのことではあるが、特に左サイドでは持ち前の思い切りの良さを発揮。決勝ではPKとなるファウルを与えてしまったが、突破を許してはいけない位置で迷うことなく、相手の進入を止めるために身体を投げ出した。

「あれ、ファウルするつもりで行ったんじゃないんですけど(苦笑)。でも、いつも行くか行かないかというギリギリの判断が必要なときは、"行く"方を選ぶと思います」
 
 有吉が習得しなければならない「なでしこサッカー」の要素はまだ多く残っているが、セーフティを意識しすぎて気持ちが引き気味になりがちな初招集で積極的な姿勢を見せ、スタートとしてはまずまずの成果を得た。

 アメリカ、ブラジルという世界屈指のチームと対戦するキリンチャレンジカップは、ロンドンまで数少ないアピールの場。特に、新戦力として招集された選手たちにとっては、最後のチャンスとなるかもしれない。

「まだなでしこのサッカーが表現しきれない自分が入ったら、チーム内ではどうしても私のところが弱くなる。でも、後ろ向きのプレイをしてさらにみんなに迷惑をかけるようなことだけはしないように心がけてます」(有吉)。

 キリンチャレンジカップでは、「まず出場するチャンスをつかむことが重要」としながらも、「ブラジルって楽しみですよね。きっとドリブルとかスピード感も違う。もし、チャンスがあれば、1対1の状況でどんなテンポになるのか、ステップとか経験してみたい。できれば、そこからマネできるところを見つけられたらいいなとも思ってます!」と抱負を語った有吉。

 おそらく佐々木監督としても、強豪相手の実戦でどれだけ動けるか、見極めたい選手のひとりが有吉であることは間違いない。ホームでの試合、自身へのチャレンジ、そしてロンドン五輪代表の座......。緊迫感のある環境下で、どのようなプレイを見せるのか、勝負どころを迎えた有吉に注目したい。

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