【五輪代表】本大会出場決定!
チームの成長を感じさせた「ハーフタイムの修正」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 そして後半開始から10分、関塚監督の狙い通りの形で、待望の先制点は生まれた。

 中央から左へ流れながら、DFラインの裏へ飛び出した原口元気のクロスに、ゴール前で合わせたのは扇原貴宏。それまで後方でのさばき役に徹していた、ボランチだった。

 扇原が振り返る。

「前半は高い位置に入って行けず、後ろでのボール回しになっていたので、もっと前に出ようと思っていた。(原口が)サイドでタメを作ってくれたので、あそこ(ゴール前)まで入っていけた」

 サイドからの崩しは「前半から狙っていた。それが後半に実現できた」と東。チームとしての狙いは前半から徹底されており、それをハーフタイムのわずかな修正で、ゴールにつなげてみせた。わずか1カ月ほど前、自滅に近い形でシリアに敗れたチームとは思えないほどの落ち着いた試合運びだった。

 さらに5分後、清武弘嗣が追加点を叩き込むと、試合はもはや危なげのない、完全な日本ペースとなった。DFラインでゆっくりとボールを回し、時間を使いながらも、相手ディフェンスを引っ張り出すと、そのスキを突き、効率よくチャンスを作り出した。

 山口蛍は、チーム内に起きた確かな変化を感じていた。

「ゲームのなかで修正したり、選手間でコミュニケーションを取ったりできるようになった。それがあったから、(バーレーン戦で)サイドや最終ラインでの連携がよくなったんだと思う」

 たくましさを増したチームに、関塚監督も目を細める。

「いろんなことがあったが、何とか(五輪出場を)達成するんだという気持ちが、選手たちに強かったのではないか。予選を通じて選手たちが成長しているという確信がある」

 もちろん、今回の予選で露わになった課題は少なくないし、チーム内に見えた「変化」は、それらすべてが解消されたことを意味するわけではない。

 それでも、厳しい予選を通じて若い選手たちは様々な経験を積み、一歩ずつ成長していった。そして、5大会連続となる五輪本大会への出場を死守した。

 U-20年代で世界の舞台に立てなかった世代だからこそ、この予選突破には過去4大会とはまた違った、格別の価値がある。

 世界の舞台でなければ、経験できないことがある。苦しみ抜いた末に、それを知ることのできる意味は果てしなく大きい。

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