【日本代表】ウズベキスタン戦の完敗でザックジャパンが失ったもの (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 すでに最終予選進出が決まっていたこと。ウズベキスタンが、多くの主力選手を出場停止で欠いていたこと。そうした条件が重なったことで、チーム全体に漂う、どこか緊張感に欠けた空気は、90分間を通して消えることがなかった。

 ボールの失い方が悪く、攻撃から守備への切り替えも遅い。あれだけ数的不利に陥るカウンターを何度も受けるなど、これまでの試合なら考えられなかったことである。

「リスクマネージメントがうまくいかなかった。いつもなら1点を追いかける場面でも、もっとうまくバランスを取りながら攻められるはずなのに......。過信があったのかもしない」

 今野泰幸はそう話し、首をひねった。

「(3次予選の)通過は決まっていたが、勝ちにいった試合。本当は負けてはいけない戦いだった」

 長谷部がそう話した通り、この試合の日本代表は、ケガの不安があった香川を追加招集までしてメンバーをそろえ、必勝態勢で臨みながら敗れた。その意味は、決して小さくない。

 現在、日本代表はある程度メンバーを固定し、チームとしての連携を高めることに主眼が置かれている。だからこそ、例えば、昨年11月の北朝鮮戦のように控え組を起用した試合であれば、結果が出なくても、新戦力のテストだと割り切ることもできた。「主力メンバーをそろえれば、違う結果になったはず」という、よりどころがあったからだ。

 しかし、この試合で、そのよりどころは失われた。

 思えば、ザッケローニ監督を迎えて以降、日本代表は生みの苦しみを知らずに来た。新監督就任直後のアルゼンチン戦、韓国戦から、素晴らしい内容の試合を見せ、その後もアジアカップで優勝するなど、順調過ぎるほどに歩みを進めてきた。

 当然、その先にはマンネリの危険性がある。どこかで刺激が必要だった。その意味で言えば、このタイミングでうまくいかない試合を経験しておくことは、長い目で見れば悪いことではない。

 長谷部は「少なからずダメージがあるかもしれないが、自信をなくす必要はない」と前を向き、今野は「これをいい教訓にしないと。今日の負けを忘れずにやらなくちゃいけない」と自戒を込めて話す。

 その通りだろう。というより、そうでなければ困る。

 だが、まずはその前にやるべきことがある。これほど気持ちの入っていない試合を、しかもホームのファンの前でやってしまったという事実を、選手たちにはしっかりと受け止めてもらいたい。

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