【五輪代表】2年前の一体感を取り戻せるか?解消すべきチーム内の温度差 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 だが、ここで問題となるのは、どちらの判断が正解だったのか、ではない。どちらを選択するにせよ、チーム全体として意識を統一すべきだったということだ。チーム立ち上げから約1年半が経過し、最終予選もすでに後半戦に入っていることを考えれば、あまりにお粗末な試合内容だったと言わざるをえない。

 そこには「(3連勝していたことでの)緩みがあった」と、酒井宏樹は指摘する。

「(シリア戦の)事前にグアムでキャンプをやらせてもらいましたが、練習中にもいまひとつ締まりがないというか、もう少しピリピリした雰囲気があってもいいんじゃないか、というところはありました」

 いわば、油断が招いた敗戦。危機感の乏しさが、チームから一体感を奪い去ったと言ってもいいのかもしれない。

 思えば一昨年11月、このチームがアジア大会初優勝という快挙を成し遂げたとき、ピッチ上には、一体感から来るエネルギーが満ちあふれていた。一度悪い流れになっても、それをはね返すだけの反発力があった。しかし、その後、アジア大会を超える内容の試合には、お目にかかれないままである。

 優勝メンバーのひとりである、山口蛍が当時を振り返って言う。

「みんな集中していたし、試合中でも声を掛け合っていて、先制されても絶対逆転できるっていう雰囲気がグラウンドのなかにありました」

 同じ優勝メンバーの東もまた、「あのときは怖さを知らなかったというか、プレッシャーがなかったというのはありますが」と前置きしたうえで、こう話す。

「チームが同じ方向性でやれていたっていうのが、一番の要因だったと思います」

 シリア戦のようにチームがバラバラのまま、次のマレーシア戦にも臨むようでは、必要とする大量得点など臨むべくもない。果たして、チームは手痛い敗戦を機に、アジア大会当時のような雰囲気を取り戻せるのだろうか。

 禍(わざわい)転じて福とすべく、東は決意の言葉を口にした。

「シリア戦では、みんなが同じ方向を向いていないと勝てないことを実感した。すごく悔しかったけど、あの試合でチームが締まった。(シリア戦を機に)いい方向へ転がるか、悪い方向へ転がるかは自分たち次第。同じことを繰り返さないようにするしかない」

 マレーシア戦を目前に控え、山口が「選手一人ひとりが勝たなきゃならないっていう気持ちを持って、いい雰囲気になってきている」と言えば、酒井は「今回はいい練習ができている」と、チーム内の確かな変化を認める。

 5大会連続の五輪出場へ、もはや同じ過ちは許されない。

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