秋広優人・大江竜聖とリチャードの衝撃トレードに広岡達朗が「釣り合っていない」と語る理由
いつの時代も、トレードは大きな衝撃を伴うものだ。
5月12日、巨人の秋広優人と大江竜聖が、ソフトバンクの砂川リチャードとの2対1のトレードが決まった。
毎年のように「巨人の期待の若手」として注目され、直前まで一軍登録されていた秋広の放出に、球界関係者は一様に驚きを隠せなかった。
巨人に移籍して最初の試合となった5月13日の広島戦で本塁打を放ったリチャード photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【コンタクト能力は秋広のほうが断然上】
秋広はプロ3年目の2023年、121試合に出場して打率.273、41打点、10本塁打の成績を残し、一時はクリーンアップを任されるなど飛躍を見せた。規定打席にはわずかに届かなかったが、その潜在能力の高さは誰の目にも明らかだった。
翌年、阿部慎之助監督が就任しさらなる飛躍が期待されたが、出場はわずか26試合にとどまり、打率.261、1打点、本塁打ゼロと低迷。今シーズンも開幕は二軍スタートとなり、5月2日に一軍昇格を果たすも7打数1安打と結果を残せなかった。
一方、巨人に移籍したリチャードは、昨年まで5年連続してウエスタン・リーグで本塁打王を獲得した長距離砲だ。巨人に移籍して最初の試合(5月13日の広島戦)で「7番・三塁」でスタメン出場すると、2打席目でいきなり本塁打を放った。
このトレードについて、球界の重鎮である広岡達朗は次のように語る。
「岡本和真がケガで離脱して、その穴を埋めるためにトレードでリチャードを獲得したのだと思うが、キャンプで見た限り、たしかにパワーはあるがまだバッティングが粗い。ホームランを30本打てたとしても、打率はせいぜい2割ちょっとしか残せないのではないか。そんな選手が岡本の代わりになるとは思えない。コンタクト能力なら秋広のほうが断然上。はっきり言って、このトレードは釣り合っていない」
今回のトレードは巨人側から仕掛けたと言われており、長期離脱となった岡本の代わりとして"右の長距離砲"であるリチャードがほしかったのは明白だ。ソフトバンクとしても、規格外のパワーを持つリチャードを易々と手放したくない。そこで交換要員として名前が挙がったのが、トレード前日まで一軍登録され、ベンチ入りしていた秋広だったというわけだ。
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著者プロフィール
松永多佳倫 (まつなが・たかりん)
1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。