今久留主成幸が語る明治大野球部と島岡吉郎監督とのエピソード。明治魂とは「選手への愛情と勝利への執着。みんな島岡教の信者だった」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Ichikawa Mitsuharu (Hikaru Studio)

『4軍くん(仮)』コミックス第1巻発売記念SPECIAL!
大学野球を10倍楽しく見よう!特集〜第5回 明治大OB・今久留主成幸氏

『ヤングジャンプ』で連載中の『4軍くん(仮)』のコミックス第1巻発売を記念して、「大学野球を10倍楽しく見よう!」特集がスタート。東京六大学野球部OBの6人にご登場いただき、母校について熱く語ってもらった。第5回は高校時代に桑田真澄、清原和博らとともにPL学園の黄金期を築き、明治大では主将としてチームを牽引した今久留主成幸氏だ。

明治大卒業後は横浜、西武でプレーした今久留主成幸氏明治大卒業後は横浜、西武でプレーした今久留主成幸氏この記事に関連する写真を見る

【島岡御大の言葉が成功報酬】

── 明治と言えば島岡御大です。島岡吉郎監督は1952年から監督、総監督を37年務めて、東京六大学リーグ戦で明治に15回の優勝をもたらしました。厳しくも情に厚い『人間力』重視の野球を提唱した島岡御大の明治で最後の主将を務めたのが今久留主さんです。島岡御大とはどんな思い出が蘇りますか。

今久留主 御大が常々おっしゃっていた『なんとかせえ』という言葉を受けて、僕らは試合でも人生でも勝ちにこだわってきました。御大はリーグ戦で負けると烈火のごとく怒り狂うんです。だから試合終了と同時にメンバー外の下級生は神宮球場からダッシュで銀座線です。

── その"ダッシュで銀座線"のフレーズは明大野球部あるあるのなかで聞いたことがあります(笑)。

今久留主 そう、神宮球場から外苑前の駅まで妥協なきダッシュです。で、銀座線に飛び乗って、渋谷で京王線に乗り換えて、つつじヶ丘にあったグラウンドまで大急ぎで戻ります。すぐに水を撒いて、整備して、メンバーの帰りを待たなければなりません。その後は暗くなるまで延々と練習です。

 御大はずっと何も言わずに座っていました。時折、怒りがこみ上げてくるのか『バカ野郎、この野郎』と呟いていて、練習はいつまでも終わりません。当時の主務(マネージャー)だった岩井(俊樹)さんが『監督、選手にご飯を食べさせないと力が出ません』と耳元で囁くと『ご飯食わなきゃ力出ないんだよ、ご飯食わしてやってくれ』となって、ようやく練習が終わります。

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