1年生開幕投手・斎藤佑樹が衝撃の神宮デビュー。初登板初勝利も「大学野球のレベルの高さを痛感させられた」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

連載「斎藤佑樹、野球の旅〜ハンカチ王子の告白」第22回

 2007年4月14日、神宮球場にはその前年の開幕戦の4倍を超える1万8000人の観衆が詰めかけた。地上波の民放テレビやAMラジオが生中継をするほどの注目を集めた東京六大学野球、春季リーグの開幕戦。東大との試合で早大の先発マウンドに上がったのは、1年生の斎藤佑樹だった。

1年生ながら春のリーグ戦の開幕投手に指名された斎藤佑樹1年生ながら春のリーグ戦の開幕投手に指名された斎藤佑樹この記事に関連する写真を見る

【6回1安打無失点の好投】

 僕って「あの時は緊張したでしょう」と言われると、「いや、そんなことないですよ」とつい強がりたくなるんです。でもさすがにあの初戦の東大戦はすごく緊張しました。大学野球に挑戦する、その最初の試合でしたからね。いったいどれだけレベルが高いんだろうというところがまったくわからなかったし、リーグ戦も初めてでしたから1試合の持つ重みもよくわかっていなかった。メチャクチャ緊張して、地に足がついていない感じがありました。

 大学生として初めて上がる神宮球場のマウンドに、高揚する感じと、ふわふわした気持ちがあったんだと思います。そういう時ってよく「身体が軽い」という表現を使うんですが、あの試合も僕のなかでは身体がすごく軽かった。そうなると難しくて、ちょうど休み明けにボールを投げている感じになるんです。身体が軽すぎて、ストライクゾーンには投げられても、コースにきちんと投げ分けられなくなります。

 ただ、ボールにはしっかり指がかかっていたので、ストライクゾーンに投げられれば何とか勝負はできました。だからコントロールはアバウトでも、球の力で勝負できるフォーシームとスライダーを多く使いましたね。

 結局、5回まではノーヒット、6回に初安打を許しましたが、その1安打だけの無失点ピッチングをすることができました(74球、無四球、奪三振8、勝利投手)。それでも大学野球のレベルの高さを痛感させられました。

 初回、先頭バッターの井尻(哲也)さんにいきなり強烈なファーストライナーを打たれたんですが、もしあれが抜けていたら、その後はどうなっていたかわからなかったと思います。しかもあれはファーストスイングでしたから、初めて見る僕の球にいきなりアジャストしてきたわけで、その能力の高さにはビックリさせられましたね。

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