亀山努のトレードマークとなった「ヘッドスライディング」は真弓明信への一途な思いからだった

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Sankei Visual

「たまたま、その5つのなかで結果が出たんです。そしたら監督がそのまま使ってくれて。とくに、監督から話はなかったですね。初めてスタメンで行く時も、コーチの方から『2番で行くぞ』って言われただけで。たぶん、足が速いから2番になったんじゃないですかね」

 開幕戦こそ、途中出場で回ってきた打席で空振り三振。それでも亀山は第2戦、9回に代走で出てホームでアウトになるも、延長10回にダメ押し2点タイムリーを放ち、チームのシーズン初勝利に貢献。巨人との第1戦は代走出場も、第2戦は「2番・センター」で先発出場し、3回、相手先発の斎藤雅樹から二塁内野安打。一塁にヘッドスライディングして間一髪セーフになった。

「タイガースは斎藤さんをまったく打てなかったんです。レギュラーが打てないんですから、自分もまず打てないなと。だけど、使ってもらっている以上は何かで結果を出さなきゃと思って。フライだったら意味ないけどボテボテだったら、当初、生かそうと思っていた足が使えるわけなので。それが高いバウンドになって、『行ける』となったらもう頭から突っ込んでましたね」

亀山努が抜擢された理由

 過去2年間で2勝11敗。阪神打線は斎藤を苦手にしていた。そこで中村監督は右サイドハンドの斎藤に対し、左4人のオーダーを組んだ。4番・サードのトーマス・オマリー、6番・ライトの中野佐資、新人で7番・ショートの久慈照嘉がいて、亀山が4人目で加わった。そしていきなりのヘッドスライディングにナインが衝撃を受けた。当時、和田が語っている。

「今までウチにはファーストに滑り込む選手なんていなかった。しかも頭から......。すごく思いきった走塁、そして守備もそう。今までのウチにはいないタイプだった。アイツがチームに新しい風を吹き込んだんです」

 亀山が躍動したこの一戦、阪神は先発の中込伸が2回までに4点を失っていた。それでも3回に捕手・山田勝彦のタイムリー、新加入した3番のジム・パチョレックに満塁走者一掃の二塁打が飛び出して同点。5回に押し出しで1点を勝ち越すと、3回以降は立ち直った中込、8回からは抑えの田村勤が零封して逆転勝利。同年の新戦力と投打の若手が揃って結果を出していた。

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