ヤクルト村上宗隆の三冠王の確率は「70パーセント」。八重樫幸雄が好調の理由を徹底分析

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Kyodo News

メンタル面の強さも三冠王の必須条件

――6月30日の対広島戦、7月5日の対巨人戦では、両チームともに積極的にインサイドを攻めて、入念に上体を起こした上で内角への意識づけをしていました。

八重樫 巨人はそこまで徹底的には攻め切れていないけれど、広島の場合は厳しいボールがすごく多い。そこで村上がバッティングを崩さないかどうか。そこがポイントになってきますね。以前、山田哲人が徹底的な内角攻めで、ちょっと腰を引くようになって崩されたことがあるけど、今年の村上なら大丈夫な気がしますね。

――メンタル面での変化は感じられますか?

八重樫 すごく落ち着いているように見えますね。去年までは「どんなボールでも打ってやろう」という気持ちが垣間見えたけど、今年はそれがほとんどない。じっくりとボールを見て、自分の狙い球、打てるボールだけをスイングする。それは気持ちの余裕、落ち着きがあるからできることだと思います。

――新型コロナウイルスにより、選手が大量離脱した際にも「中心に僕がいる」と頼もしい発言もありました。中心選手としての自覚も芽生えつつあるように思います。

八重樫 いや、彼の場合はもともと、そういう気質を持っていた。ここ2、3年を見ても、村上は山田や青木(宣親)に対しても、まったく臆することなく堂々としていたでしょう。どちらかというと、山田や青木に対して、「先輩、しっかりしてくださいよ」と尻を叩く感じだったから(笑)。村上は「チームのために」という意識がすごく強い男なんでしょうね。

――今後、三冠王争いを繰り広げていく上ではライバルもいます。まずはホームラン王争いでは、巨人・岡本和真選手がその筆頭でしょうか?

八重樫 岡本が筆頭だとは思うけど、現状ではかなりの差がついていますし、さらに広がるような気がします(村上33本、岡本21本)。先ほど言ったように、村上には大きな問題点、課題がないけど、今年の岡本は本調子にはほど遠いですから。

――今年の岡本選手についてはどのように見ていますか?

八重樫 坂本勇人がいないことで、かなり焦っている気がします。村上とは反対に「来た球を全部打とう」という気持ちが空回りしているから、バットの先に当たるような打ち損じがすごく目立っている。決してふてくされたりしているわけではないけれど、「打てなかったら全部オレのせいなんだ」という感じで元気がなくて、見ていてかわいそうな気持ちになってきますね。

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