トヨタ自動車出身の選手はなぜプロで活躍できるのか。吉見一起が明かす「トヨタ流」育成術 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

熾烈なポジション争い

── 現在はトヨタ自動車野球部のテクニカル・アドバイザーとして、投手陣にどのような指導をされていますか。嘉陽宗一郎投手という注目選手もいます。

「メインの投手コーチがいるので、僕は細かな技術云々よりも、まず考えることの大事さを伝えます。答えを最初に言ってしまうのではなく、ヒントを与えて自ら答えを見つけるほうが技術は身につきます。何を大事にするかは人それぞれなので、『個人で目的を持とう』と。そうすれば何かが見えてくるはずだと伝えています。ピッチングについては、しっかり考えて『ストライクゾーンで勝負しよう』と言っています。嘉陽投手については、好不調の差が投球フォームに出るので、そこは気をつけて見るようにしています」

── それにしても、なぜトヨタ自動車出身は傑出した選手が多いのでしょうか。

「決して少数精鋭というわけではありません。ただ高卒選手でも大卒選手でも、ライバルと切磋琢磨するなかでポジションを奪う精神力があります。それに加え、先述したように、プロでも通用するフィジカル面の土台がきちんとできている。この2つがプロで活躍できる大きな要因だと思います。

 さらにつけ加えるなら、人間教育も行き届いており、そこも大きな要因だと思います。昨年ルーキーながら、東京五輪でもペナントレースでも大活躍した栗林(良吏)は、誰に聞いても人間性がすばらしいと言います。また、楽天の監督を務めた平石(洋介/現・西武コーチ)さんは、トヨタ時代に一緒にプレーしていますが、当時からキャプテンシーに優れていて、みんながついて行こうという気持ちにさせられる方でした。平石さんに教わって印象深いのは『最悪の状況になった時の対応を考えて練習しよう』という危機管理の発想でした。普段からそうしたことをやっているので、どんな場面になっても慌てない。そうした伝統が、好選手を輩出しているのだと思います」

── 都市対抗の初戦の相手は、7月19日の日本製鉄かずさマジックです。選手の活躍、6年ぶりの優勝を期待しています。

「ありがとうございます。ひとつでも多く勝てるように、頑張ります」

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