大変革がなされた逆指名ドラフトでダイエーは圧勝。根本陸夫はスカウトに「ハンコをもらうまで帰って来るな!」 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Sankei Visual

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 強烈な言葉だが、根本はごく普通に、簡単に言っていた。あらゆる手段を尽くし「なんとしても逸材を獲る」ということが当たり前の逆指名時代だったから、小川はそうした言葉もすんなり受け入れた。

「真剣な顔ではなく、さりげなく笑いながら言うんですよ。でも、それは根本さんの本音なんですよね。本音だとわかるから、とにかく仕事をして結果を出して、負けないというかね、日本一になるんだと。あの西武を倒すんだ、巨人を倒すんだ、ということしか僕の頭にはなかったから。休みなんて考えたことないし、休みたいと思ったこともないんです」

 根本がそうだったように、スカウト時代の小川は自宅で過ごす時間がほとんどなかった。ずっと出回っているなかで人脈がつくられ、いろいろな情報が入ってきた。

「そのなかで表の情報というのは"氷山の一角"なんです。やっぱり物事は何でも表と裏があるわけで、裏を知らなかったら勝てません。どんなに表できれいなことを言っていたって、裏に何があるかはわからないから。それを知るためには自分で足を運んで、時間を労してやっていかないといけない。だから、そういうなかでは『好き』ということが大事になると思います。

 絶対、『仕事』と思ったら辛いですから。僕は野球が好きだし、目的は日本一になることなので、それを考えたら、暑いとか寒いとか、お腹空いたとか眠いとか、人間の本能的なものは感じるけど、『今日も仕事かぁ』なんて思ったことは一度もなかった。好きな野球で、目的を果たすために結果を出すこと。これが一番の喜びでしたね」

アマの逸材を次々と獲得

 95年、根本が招聘した王貞治(元・巨人)が監督に就任して以降、チームはなかなかAクラス入りを果たせなかった。だが、根本はそれ以前から王を支える体制をつくり続けていた。93年オフに西武とのトレードで秋山幸二、阪神からFAの松永浩美を獲り、94年オフには西武からFAの工藤公康、石毛宏典を獲った一方、ドラフトでも有望選手を続々と獲っている。

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