村上宗隆は三冠王を達成できるのか? 広澤克実が分析「最大の壁は首位打者だが、ヒットにこだわりすぎるは危険」

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

 7月2日にヤクルトが、プロ野球史上最速で優勝マジック「53」を点灯させた。その大独走の原動力となっているのが、高卒5年目の村上宗隆である。7月4日現在(以下同)、打率.307(リーグ6位)、本塁打29本(リーグ1位)、打点78(リーグ1位)と、「三冠王」の可能性も十分にある。2004年の松中信彦(当時ダイエー)以来、史上8人目・通算12度目の「三冠王」への期待は高まるばかりだ。村上の快挙達成に必要なことは何なのか? かつてヤクルトの主砲として2度の打点王(91年、93年)に輝いた広澤克実氏に聞いた。

本塁打、打点でセ・リーグトップを走るヤクルトの村上宗隆本塁打、打点でセ・リーグトップを走るヤクルトの村上宗隆この記事に関連する写真を見る

好打者の4条件

 いい打者というのは、ボールを長く見られて、「ストレートか変化球か」「ストライクかボールか」の判断するエリアが捕手寄りにあります。いわゆる「呼び込んで打つ」ことのできるバッターが好打者というわけですが、それには4つの条件があります。

① 体が前に出ない(ステップしたあと、体が前に突っ込めば18.44mの距離が短くなってしまう)
② バットをコンパクトに出せる
③ ヘッドスピードが速い
④ ステップ幅が狭い

 この4つが好打者の条件なのですが、村上はこのすべてを兼ね備えています。だから、ホームランだけでなく、打率も残せるのです。

 私は1985年にヤクルトに入団したあと、95年から99年まで巨人、2000年から03年まで阪神でプレーしました。現役時代、落合博満さんとランディ・バースというふたりの「三冠王」のバッティングを間近で見てきました。

 落合さんはロッテ時代の1982年、85年、86年、バースは85年、86年に三冠王に輝いています。じつは落合さんは、中日時代の91年も三冠王のチャンスがありました。その年、落合さんは本塁打王のタイトル(2位/池山隆寛)を獲得するのですが、打点王は私(2位/落合)、首位打者は古田敦也(2位/落合)と、結果的にヤクルト勢が落合さんの三冠王にプレッシャーをかけたわけです。

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