広岡達朗が怒りのダメ出し「原辰徳には人を育てていく理念が見えない」。ヤクルトと巨人の「差」はどこにあるのか (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Koike Yoshihiro

 指揮官は戦術・戦略を立て、選手を育て、鼓舞しながら勝利に向かってチームを邁進させていく。強いチームには、フィールド内にも監督のようなシンボル的存在が必ずいる。それは往々にしてベテランが担う場合が多い。ヤクルトなら、青木と42歳の石川雅規がチームの大きな支柱となっている。

坂本勇人の後継者問題

 そしてチームを強くするためのもうひとつの条件は活性化だ。チームというのは、盤石なレギュラー陣が確立しているとしても、ケガによる離脱によって、あっという間にガタガタになってしまうことがある。替えが効かない選手ならなおさらだ。

 巨人の大黒柱である坂本勇人は今年33歳とベテランの域に達し、今シーズン5月1日に右膝内側側副靭帯損傷により登録抹消された。1カ月ちょっとで復帰したものの、明らかに本来の動きではない。

 坂本の後継者問題は数年前からの課題であり、昨年も開幕前に田口麗斗を放出し廣岡大志を獲得したのは、まさに「ポスト坂本」を見据えたトレードだった。しかし、今季も廣岡のバッティングはパッとせず、おまけに今になって左が足りないと嘆いている原監督の言動を見ると、広岡が言うようにビジョンの欠片もない。

 そして今年、坂本の離脱によってショートのポジションに就いたのが、高卒2年目の中山礼都。俊足を生かした広い守備範囲で何度もチームを救った。また、現在ファーストのレギュラーに定着している増田陸も本職はショートであり、来年以降はショートコンバートプランも浮上しているが、この件についても広岡は不満があるようだ。

「ショートの坂本にしたって、後釜をつくろうとする意識がない。いい選手がいたら勝てるという都合のいいことばかり考えているからだ。スターティングメンバーを1番からただ単に並べているだけでは意味がない。他チームでクリーンアップを打っている選手をただ集めてやっている感じで、それだったらオールスターの監督でもやっていればいい。

 チームというのは、それぞれに合った戦力というのがある。同じ考えでやっても勝てるはずがない。場面、場面でこうやるという決まりごとをつくり、いいチームを形成していくという理論をそもそも持っていない」

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