元NPB審判員・杉永政信が選ぶ「球種別・最強投手」。落合博満が腰を抜かし、古田敦也が絶叫したカーブの使い手は? (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Kyodo News

 右投手の"インスラ"の軌道は、右打者の体にぶつかるように向かってきて、ストライクゾーンに入ります。今でこそ投げる投手が多いですが、当時はど真ん中からアウトコースギリギリに決まるスライダーを投げる投手がほとんどでした。そこで「体の近くに来たらボール球」という先入観を持たないためにも、持ち球の確認のために谷繁捕手に聞いたわけですが、返ってきた答えが「カットボールだったんです。

 カットボールはスライダーよりもスピードが速く、曲がり幅は小さい。だから川上投手がカットボールを投げ始めた時は、面食らった打者が多かったはずです。

 川上投手は2002年にノーヒット・ノーランを達成しました。翌日のスポーツ新聞には「スライダー」と「カットボール」の表記が混在しており、それだけまだカットボールがポピュラーではなかったということです。

阪神最強のリリーフ陣「JFK」のひとりとして勝利に貢献したジェフ・ウィリアムス阪神最強のリリーフ陣「JFK」のひとりとして勝利に貢献したジェフ・ウィリアムスこの記事に関連する写真を見る

伊藤智仁と双璧のスライダー

スライダー/ジェフ・ウィリアムス(阪神)

 スライダーといえば、真っ先に思い浮かぶのがヤクルトの伊藤智仁投手じゃないかと思います。とくにルーキーイヤーの1993年、あの「高速スライダー」に度肝を抜かれた選手は多かったはず。審判の間でも「あんなに速くて大きく曲がるスライダーは初めて」と評判になりました。大袈裟ではなく、130キロ前後で鋭角に曲がってくる。異次元のボールでしたね。

 そんな伊藤投手のスライダーに勝るも劣らないのが、ジェフ・ウィリアムス投手です。左のサイド気味から投じられたスライダーは、打者の手元に来てから速く、鋭く曲がった。打者からすれば、ストレートと思ってスイングしたところで曲がってくる。あの球を打つのは至難の業です。

 2005年はウィリアムス投手、藤川球児投手、久保田智之投手の"JFK"の活躍で阪神はリーグ優勝を成し遂げました。ウィリアムス投手のスライダー、藤川投手のストレート、久保田投手のフォーク。彼らが出てくるまでに1点でもリードしていたら、「勝負あり」でした。

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