チーム最多登板で防御率0点台。DeNA伊勢大夢が「根拠なき自信」を失って得たもの (3ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Koike Yoshihiro

 無失点記録が途絶えたのは、交流戦初戦となる5月24日のソフトバンク戦(横浜)だった。2安打を浴び1失点。こういった記録が途絶えると、投手はある種プレッシャーから解放されるというが、伊勢の場合はもっと冷静だった。

「正直、1カ月ぐらいランナーを出していなかったので、交流戦前ぐらいはランナーを出して点をとられたとしても1点で抑えようという意識でピッチングしていたんです。結果、ソフトバンク戦では同点になってしまい申し訳なかったのですが、準備してきたことは最低限できたのかなって」

 ゼロで抑え切ることができれば一番いいが、それができない時はどうすればいいのか。無失点を続けながらもプレッシャーに左右されることなく、伊勢は最低限のラインを意識しつつピッチングをしていた。このあたりにもまた大きな成長を感じられる。

未知の領域への挑戦

 さて冒頭で伊勢は「正直、疲れがある」と語っていたが、夏場に差しかかるこれからが正念場だ。好調を維持していればシーズン60試合以上の登板も見えてくるが、伊勢の過去最多登板は39試合であり、今後、未知の領域へと突入することは確実だ。だが「不安はない」と伊勢は言いきる。そんな自分を支えているのが、春季キャンプでの投げ込みだという。

「あの経験はすごく大きかったと思います」

 伊勢は宜野湾のブルペンに入るとプロになって初めて150球の投げ込みをした。キャンプ時での多投は賛否両論あるものだが、伊勢は自ら志願しての投げ込みを敢行したという。

「僕としてはキャンプに入る前から濱口(遥大)さんみたいにたくさん投げるんだって思いでいました。こういった投げ込みは若いうちしかできませんし、ましてやリリーフだとシーズン中にもできない。プロになって初めての試みで、本当一番きつかった。ただ疲れた状態でも体を使ってしっかり投げることができたので、これはシーズンに入っても疲れたことは言い訳にできないと思わせてくれる日々でした」

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