達成者はわずか7人。岩瀬仁紀が力説する「100セーブ・100ホールド」の価値 (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

 日米通算「100勝・100セーブ・100ホールド」の大偉業を達成している上原浩治氏(元巨人など)や、「負けないエース」と呼ばれた斉藤和巳(元ソフトバンク)は「もっと中継ぎ投手を評価すべき」と話す。それだけ投手の分業化が進み、先発、抑えだけでなく、中継ぎの重要性が高まっている証だろう。

岩瀬仁紀が語るブルペンの重圧

 これまで3度(99年、00年、03年)の「最優秀中継ぎ」のタイトルを獲得し、5度(05年、06年、09年、10年、12年)の「最多セーブ」に輝いた岩瀬仁紀氏にリリーフの大変さについて聞いた。岩瀬氏は通算1002試合に登板して59勝51敗、407セーブ、82ホールドを挙げた球史に残る名投手で、もう少し早い時期にホールドが正式な記録になっていたら「100セーブ・100ホールド」は間違いなく達成してはずだ。

── 岩瀬さんが思う中継ぎの大変さを教えてください。

「今でこそ勝ち試合なら、7回限定とか、8回限定とか、投げる場所が決まっている場合がありますが、以前は明確なイニングがなく、いつ出番がくるのかわからなかった。イニングまたぎもありますし、主力打者に当てられることもある。正直なところ、中継ぎ投手の評価はかわいそうなところがあると思います。とくに勝ちパターンの投手は、クローザーと同等の評価をしてもいいのではないでしょうか」

── クローザーの難しさはどんなところにありますか。

「リードしている場面での登板がほとんどですので、何がなんでもチームを勝たせないといけない。それまでつないできてくれた投手たちの思いやチームの成績がのしかかってくるので、背負うものの大きさはあります。とくに、最後の1つのアウトをとるのが難しい。結果が出ている時はいいけど、うまくいかない時は弱気になったりしますね。胃が痛くなり寝つけない時もありましたが、それでも乗り越えないといけない。気をつけていたのは、とにかく投げ急がないこと。ランナーを背負っても『点さえ与えなければいいんだ』と、いい意味で開き直って投げていました。

── 100ホールド・100セーブの価値について、どう思いますか。

「これまで"100ホールド・100セーブ"を達成した投手を見ると、中継ぎで実績を積んで、そのあとにクローザーになるケースが多い。僕自身がそうだったのですが、中継ぎをやっていると『いつかクローザーを任せられるように頑張ろう』というモチベーションになる。クローザーというのはチームのなかで一番信頼されるポジションですから。プレッシャーという意味ではどちらも一緒ですが、無事に試合を終えられた時の安堵感はクローザーのほうが大きかったような気がします」

── リリーフというのは、体力的にも精神的にも負担がかかるポジションです。

「疲労度については、中継ぎのほうが肩も多くつくらないといけないし、イニングをまたげば球数も多くなるし、きついと思います。もちろん、それを経てのクローザーとなると"勤続疲労"は相当なものがあります。とにかく先のことは考えず、目の前の打者をどうやって打ちとるか......その積み重ねでした。いずれにしても、"100セーブ・100ホールド"は簡単にできることではないですし、偉大な記録だと思います」

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