岩瀬仁紀に聞く。100球未満の完封劇「マダックス」はなぜ増えた? 佐々木朗希の達成の可能性は? (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

 単純計算で1イニング11球を要したとして、9回を投げきれば99球。これは1イニング12球になれば108球になってしまう。また、すべてのアウトを3球三振で打ちとったとしても81球。奪三振が多くても、球数は増えるのである。

 1956年に大脇照夫(国鉄)が中日戦でノーヒット・ノーランを達成したが、この時の球数は80球。しかも奪三振0という珍記録での達成だった。また同年、大脇のチームメイトである宮地惟友(よしとも)が広島戦で79球での完全試合を達成。この時も奪三振3と、打たせてとるピッチングで快挙を達成した。

 今年「マダックス」を達成した日本ハム・加藤は、9イニング平均与四球率2.00個なら抜群のコントロールと言われるなか、昨年1.26個と驚異的な数字を残している。ストレートの球速は130キロ台ながら、チェンジアップなどの変化球を駆使し、凡打の山を築いていく。

 つまり「マダックス」は、コントロールがよくて、打たせてとる投球を展開する投手に達成の可能性が高いと言える。

佐々木朗希は達成なるか?

 ただ2011年以前は、新垣渚(ソフトバンク)やダルビッシュ有(日本ハム)といった三振を奪える本格派も達成しており、必ずしも"技巧派"だけの記録ではない。

 そこで気になるのが、今年4月10日のオリックス戦で史上16人目、28年ぶりの完全試合を達成した佐々木朗希(ロッテ)の「マダックス」の可能性である。この試合の佐々木は105球で完全試合を成し遂げたのだが、驚くべきは19個の三振を奪ったことだ。これだけの三振を奪いながら、9イニングを105球でまとめたところに佐々木の非凡さがうかがえる。

 この結果を鑑みたうえで、解説者の岩瀬仁紀氏はこう見解を述べる。

「佐々木くんのように圧倒的な球速があれば、ストライクゾーンにさえ投げることができればそう簡単には打たれない。だからバッテリーも追い込んでから様子を見るのではなく、3球勝負が多い。それが球数の少なさにつながっていますし、今後もコントロールだけ気をつければ"マダックス"達成の可能性は高いと思います」

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