広島・遠藤淳志が「もったいない」から5年目に本格化。佐々岡監督も惚れ込む才能は4本柱を脅かせるか (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Koike Yoshihiro

 2020年、監督に就任すると、開幕ローテーション投手を任され5勝を挙げた。

 順調にステップアップしているように思われたが、2021年は開幕直前に二軍降格となり、わずか2試合の登板に終わった。

 本人のなかでは挫折だったかもしれない。ただ周囲には「持っている才能を発揮できていない」と映っていた。伸び悩む遠藤の姿に、佐々岡監督が嘆いたことがあった。

「もったいない。あれだけの体で能力もあるのに......。取り組みなのか、考え方なのか」

 186センチの身長に長い手足、身体能力も高い。入団時に二軍投手コーチとして見てきた佐々岡監督は、誰よりもその才能に可能性を感じていた。

 厳しさは期待の表れ──今年の春季キャンプの広島のブルペン、球の強さや回転がよければボールを受ける捕手から「ナイスボール!」の声が響いた。だが、遠藤の投じた高めの真っすぐに対しての「ナイスボール」の声に佐々岡監督は眉をひそめた。

 ブルペン捕手に「高めの球はナイスボールと言わなくていい」と指示した。まだ調整の初期段階ということもあり、投手はみな球筋を確認する時期だ。そんななか、そのような指示を出したのは、記者が見る限り、遠藤だけだった。

「まだこの時期だけど、(大瀬良)大地や森下とは違う。遠藤にとっての課題はそこ、何度それで(球が高めに浮いて)やられたんだ。同じことを繰り返しているんだから、この時期から(高低を)意識しないといけない。あのコースは『ナイスボールではない』と認識するところから始めないと」

 それからしばらくは遠藤の投球練習時に「ナイスボール」の声があまり聞かれなくなった。ところが、沖縄2次キャンプを機に「ナイスボール!」の声が増えるとともに、投球内容も上向き、実戦に入っても結果がついてくるようになった。

 シーズンに入っても隙を見せまいと努力に励み、懸命に腕を振った。ここまで3勝3敗、防御率2.68。数字に表れない経験を重ねている。

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